身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
「昴くん、あとで遊ぼう。肩車もボール遊びも、なんでもするよ」
「ほんと? やくそくね」
ひょこっと顔を覗かせて上目遣いをする昴に、嘉月さんは思わず頬を緩ませた。あまり顔には出ないけれど、内心メロメロになっているに違いない。
そんなふたりの様子を、父も微笑ましげに眺めていた。
今日姉たちは三人で出かけているので、リビングで遊ぶ昴を見つつお茶をする。嘉月さんから、私たちが別れた後どう過ごしていたのかを聞いた父は、気の毒そうに眉をひそめた。
「ご家族からは本当になにも聞かされていなかったのか……」
「母と伯父は、私のためだと思って黙っていたのでしょうが、許せはしません。あの事故があったからといって、都さんとの関係を隠していていいわけがない。ふたりとはきちんと話し合うつもりです」
厳しい表情をする嘉月さんからは、静かな怒りが滲み出ている。彼からしたらやりきれないだろう。
でもお母様たちの気持ちもわかるし、私だって彼の負担になりたくないと思って別れを選んだ。決して彼らだけのせいではない。
父も同じように思ったらしく、「そもそも事故が起こらなければ……」と苦々しげに呟く。