身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました

「浮気疑惑だの現場だの、しらじらしいねぇ。芳枝さんに、都ちゃんが浮気してるとかってデタラメを吹き込んだのは鈴加さんなんじゃないの? 三年前、俺たちを見ていたのはあなただったんだから」
「えっ」


 思わぬ事実が明かされて目を丸くする私に、朝陽くんは「仕事中、偶然見かけてたらしいよ」とさらりと告げた。このふたりがそんな話までしていたことにも驚くが、まずは事実を確かめるのが先だ。


「そうなんですか?」


 テーブルのそばに立ったままの鈴加さんに問いかけると、彼女は私を一瞥しておもむろに動き出す。朝陽くんの隣にナチュラルに腰を下ろし、「ええ」とあっさり認めた。


「あなた方が会っていたと芳枝さんに教えたのは私ですよ。でも、それを聞いてどう判断するかは彼女次第ですよね。彼女は私を信じて、都さんを遠ざけた。その結果がすべてです」

「裏切られてつらい経験をした芳枝さんなら、疑わしい情報を流せば都ちゃんに不信感を抱くようになるって、簡単に想像はつく。鈴加さんが誘導したようなものでしょう」


 静かに火花を散らすふたりの話を聞いて腑に落ちた。
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