身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
鈴加さんも嘉月さんをずっと好きだったと言っている。私たちを破談にさせるために、あの場面を見かけた彼女が写真を撮り、お母様に送って悪い印象を植え付けたのだろう。
眉をひそめて黙考していると、朝陽くんがテーブルに少し身を乗り出し、仏頂面で言う。
「都ちゃん、気をつけてね。この秘書さんは表の顔はすごく可愛いしイイコだけど、お腹の中はこの通り真っ黒だから」
「……想像はついてた」
正直に返すと、彼女は腕を組んで「ふん」とそっぽを向いた。なんだかもう、あからさますぎて逆に清々しい。
鈴加さんもどうにかして彼を自分のものにしたくて、いろいろと試みているんだろう。やり方は正攻法ではないけれど、一途で不器用な人なのかもしれない。
綺麗な顔に不機嫌さを露わにしている彼女に向かって、私は口を開く。
「確かに、お母様に疑惑を抱かせたことは私たちが別れるひとつの要因になりましたが、私は鈴加さんを責める気はありません」
鈴加さんは煙たそうにするが、私は善人ぶるわけではない。
「だって、あなたはこの三年の間に嘉月さんとの関係を変えられていないから」
きっぱり放つと、彼女は意表を突かれたように目を見開いた。