身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました

「大事なのは、私と彼の気持ちです。いくら周りを取り込んだって、私たちが家族になることを望んでいる限り離れません」


 ぶれない視線を向け、負けるつもりはないのだと意思表示をする。朝陽くんも神妙な面持ちで私を見つめていた。

 一瞬動揺を見せた鈴加さんだが、私から視線をはずしてふっと鼻で笑う。


「……いつまでそんな強気でいられるかしらね」


 ボソッと呟いて彼女が腰を上げた直後、店のドアが開くと同時に「かーくん!」という昴の声が響いた。

 入口を指差す昴につられ驚いて目をやると、ビジネスバッグを手にした仕事モードの嘉月さんも、私たちに気づいて瞠目している。ひとりだけ、口元に笑みを浮かべるのは鈴加さんだ。


「たまたま近くに来ていたんだけど、窓からあなたたちの姿が見えたから、入らないかって私が提案したの。そこでちょうど副社長に電話がかかってきて、私だけ先に来たってわけ。最高のタイミングでしょう」


 してやったりという調子でこっそりと囁かれ、ギクリとした。

 私と朝陽くんがふたりで会っていたのは一目瞭然。変な誤解をされてもおかしくない。
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