身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました

「っ……本当です! ピアスは、ちょっと勘違いしていただけで」
「そうか。なら、これの出番だな」


 俺はおもむろに歩き出し、ラックに置いてあったあるものを手に取って彼女に見せる。


「嘘発見器」
「おもちゃじゃないですか!」


 即行でツッコまれた通り、これは以前セーライがジョークグッズとして発売した商品だ。しかし、ただのおもちゃだと侮れない。


「おもちゃだが、ポリグラフ装置としてちゃんと皮膚電気活動や心拍を測定する。開発時にはこれを試した何人もの嘘が暴かれて、チーム崩壊の危機にまでなった恐ろしい代物だ」
「……そういえば、そうでしたね」


 今となっては開発チームのネタとなっているエピソードを思い出したらしく、鈴加さんは口の端を引きつらせた。

 俺は無表情のまま、手の平サイズのそれをずいっと差し出す。

 装置に指を乗せ、真実から遠ざかっていると静電気が起きた時のようなビリッとした刺激が来る。ただ振動が来るだけのモードにもできるが、彼女の本気度を確かめるために心を鬼にしよう。
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