身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
そう、俺が寝室に招いた相手は本気で愛した人に違いない。あの頃、俺の中には都しかいなかったはずだ。ピアスの落とし主も、きっと──。
確証はないが、そうとしか考えられない。俺がこんなに彼女を求めているのは、身も心も愛し合ったからだと。
雲間から月が顔を出したかのごとく、闇に紛れていたものがはっきりと見えてくる。
「君のおかげで、悶々としていた気持ちが晴れた。ありがとう」
すっきりとした表情で鈴加さんに礼を言い、「食事はまた仕事の休憩中に」と告げてバッグを手に取る。
ぽかんとしていた彼女は、部屋を出ようとする俺に「副社長のこと、まだ諦めてませんからね!」というひと言を慌てて投げかけていた。
こんなやり取りがあった後、すぐに都に連絡して会う約束を取りつけた。
そうして実行した葉山でのデートの最中、ピアスについていつ切り出そうかと悩んでいたが、それがきっかけで記憶が蘇るとは思わなかった。
ふたりきりのとびきり甘い時間を過ごし、彼女を家まで送り届けた後、愛し合った名残があるベッドにひとり寝転んで幸せの余韻に浸る。