身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
「ママをいじめるな!」
高い声が響き、はっと我に返る。目の前にいた昴に焦点を合わせると、彼は今にも嚙みつきそうな怒った顔で俺たちを見上げていた。
都が瞳にうっすらと涙を浮かべていることにも気づき、一気に冷静になると同時に後悔に襲われる。彼女たちの前で、こんなみっともない姿を見せてしまうなんて。
俺は慌ててしゃがみ、昴に優しく話しかけようとする。
「昴──」
「やだ!」
完全に拒絶され、胸が刺されたように痛む。俺が言葉を失い動けなくなっている間に、昴は店の入口へと駆け出し、都も俺になにか言いたそうにしつつも彼を追いかけて店を出ていった。
昴に軽蔑されただろうか。記憶や自分の気持ちを整理するのに精一杯で、彼女たちを思いやれなかった自分に嫌気がさす。
客がいなかったからよかったが、営業妨害にもなりかねないと反省し、隅っこで静観していた源さんに頭を下げる。
「申し訳ない、ご迷惑をおかけして」
「いいんですよ。この店が賑やかになるの久しぶりなんで」
源さんは苦笑を漏らしつつ茶化して、張り詰めていた場の空気を少し緩ませてくれた。