身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
「まだ引っ搔き回そうとする? そろそろ正真正銘のイイコの秘書さんになろうよ、鈴加さん」
「はぐらかさないで。本当のことじゃない。副社長の記憶がない間に、都さんに迫ろうって何度も思ったんでしょう」
「ねえ、その口塞いでいい? ガムテープで」
口の端を引きつらせる朝陽は否定も肯定もしないが、本当に都に想いを寄せていたとすれば、彼の行動は納得できる。
でも鈴加さんが言うように、俺が都と離れている間に奪おうと思えばできたはずなのに、朝陽はそうしなかった。やはり律儀な男だと思う。
「……誰より可愛いからな、都は。朝陽以外にも惚れた男はたくさんいるだろう」
突然のろけとも取れる発言をぽつりとこぼすと、ふたりは目を丸くしてこちらを振り向いた。
ようやく気持ちも頭の中も落ち着きを取り戻し、朝陽を見つめて本音を吐露する。
「俺は、朝陽と都の関係を疑ったりはしていない。ただ、お前に嫉妬したんだ」
「……え?」
朝陽は意外だというようにキョトンとする。
三年前も今も、胸に渦巻くこの黒い感情は朝陽への嫉妬だ。それは都とのことに関してだけではなく、実はずっと前から抱いていた。