身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
彼の優しさと、小さな身体をしっかり抱きしめたおかげで、次第に気持ちが落ち着いていく。
昴にも「急に道路に飛び出すのは絶対にダメだよ」と真剣に注意すると、自分の行動は危ないものだったのだとわかったらしく、シュンとして頷いていた。
今度は昴を真ん中にして私たちが両側で手を握り、家に向かって再び歩き始めた。嘉月さんは一度社に戻らなければいけないらしいが、急ぎの用はないというのでついてきてくれている。
ひたすら反省して口数が少なくなっている私の代わりに、彼が口を開く。
「しかし、子供って本当に予測不能な行動をするんだな。どうして急にあっちに行こうとしたんだ?」
それは私も気になった。昴はどちらかといえば落ち着きのある子で、急に走り回ったりするタイプではないから今日はどうしたんだろうと。
嘉月さんと一緒に昴を見下ろすも、彼はもじもじして答えようとしない。嘉月さんがふっと口元を緩め、「怒ってないよ。気になっただけ」と声をかけると、昴はバツが悪そうな顔をして呟く。
「……おはながあったから」
「花?」
「なかなおりのおまじない。ママいってた」