身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
「昴も、嫌な気持ちにさせてごめんな」
申し訳なさそうに謝る彼に、昴はぶんぶんと首を横に振った。
「かーくん、やじゃないよ。すきだよ」
素直な言葉が小さな口から紡がれて、嘉月さんは目を見張る。
昴の瞳がまたうるうるとし始め、彼も「ごめ、なさい」と謝った。どうやら『やだ!』と拒絶したことを悪かったと思っていたらしい。
嘉月さんがなにかを堪えるように一瞬唇を結び、昴をぎゅっと抱きしめる。
「俺もだ。昴もママも、いつだって大好きだよ」
心のこもった彼の声と、わが子の純粋な気持ちに感化されて、私も熱いものが込み上げた。
足元では踏まれるたび強くなるカモミールが咲き誇っている。私たちも絆がほつれそうになったら何度も結び直して、かけがえのない家族になっていこう。
その日の夜、昴が眠った後、私たちはソファに寄り添って座り話をした。
私と朝陽くんの姿を見た時の記憶が蘇ったことや、昔から朝陽くんと自分を比べてしまっていたから余計に嫉妬したのだという本音を聞いて、少し胸が苦しくなった。
嘉月さんの肩に頭を預けて複雑な思いを巡らせていると、彼は私の髪をそっと撫でながら言う。