身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました

「事故直前の記憶はまず思い出せないだろうと医者に言われていたが、やっぱり無理そうだ。その時、俺たちはなにを話していた? 俺は、君を疑って泣かせたりしなかったか?」


 不安そうに問いかけられたものの、私は首を横に振って「私を疑っている様子なんてなかったよ」と微笑んだ。

 私たちを目撃した彼は、きっと少なからず動揺したはず。そうなるのは当然だけれど、会った時には普通だったのを考えると、私を信じると決めていたのだろう。

 確かあの時、朝陽くんと偶然会ったことは言ったよね。お母様にそれを内緒にするとなると私はきっとボロが出るから、嘉月さんも朝陽くんと会っていることを打ち明けないかという提案もした。

 当時の会話を覚えている限り詳しく話し、私は頬を緩める。


「そしたら嘉月さん、『そうだな、君は隠し事ができる人じゃない』って言ってた。私のそういうところが好きだって」


 こんな風に自分で言うとちょっと恥ずかしいけれど、あなたが変わらず私を愛してくれていたんだって教えてあげたい。

 嘉月さんはほっとした様子で、「思っていることは今と一緒だ」と呟いた。
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