身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
「妊娠も打ち明けたら、嘉月さんすごく喜んでくれたの。でも、そのすぐ後に……」
あの恐ろしい情景が蘇り、幸せな気持ちが一気に掻き消される。表情を強張らせて口をつぐんだ。
そこまでは聞きたくなかったかな。妊娠報告をした直後にどん底に突き落とされたなんて話は。
一瞬後悔しかけたものの、嘉月さんはなぜか切なくも嬉しそうな笑みを浮かべている。
「そうだったのか……よかった。俺も一緒に喜べたんだな」
感極まったような声を聞き、あの時の場面が鮮明に蘇る。少し瞳を揺らし、人前にもかかわらず私を抱きしめて、『おめでとう』と言った彼の姿が。
「思い出せないのは残念だけど、君の記憶に残っているなら救われる」
嘉月さんは穏やかに言い、瞳を潤ませる私の頭をそっと抱き寄せた。一緒にいる意味がまたひとつ増えた気がして、胸がじんとする。
「ふたり目ができたら、また感動を味わえるしね」
耳元でドキリとするひと言が囁かれ、顔を上げると彼は意味ありげに微笑んでいる。私はほんの少し照れながら「うん」と頷いた。
さらに幸せな未来はきっとすぐ近くにある。そう信じて、私たちは愛を確かめ合うようにキスを交わした。