身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
……まさか、そんな風に思っていたなんて。罪悪感とはこういう意味だったのか。
声のトーンを落として本心を吐露する彼を、複雑な心境で見つめる。
「でも、かづ兄と幸せになってほしい気持ちも本当。だから苦しかった。諦めてたとはいえ、ふたりが再会したって聞いた時は正直複雑だったよ」
そこまで打ち明けると、朝陽くんはひとつ息を吸い、明るい表情に戻って私を見上げる。
「今はもう完全に吹っ切れてるから心配しないで。純粋にふたりの幸せを願ってるから」
無理をしているようには見えないし、恋心を抱いていたのはおそらく本当に過去の話なんだろう。彼が悩んでいるとは知らず、これまで嘉月さんのことを相談していたのが申し訳なく感じる。
「ごめんね……ずっと気づかなくて」
「気づかれないようにしてたんだからいいんだよ」
さっぱりと返す彼に、私は眉を下げて微笑み、「ありがとう」と感謝を伝えた。
そうしてふたりが同時にコーヒーを口にしたのをきっかけに、話がコロッと変わる。
「それにしても、鈴加さんに写真を撮られてたのにはびっくりしたわ。芳枝さんを惑わせていたのもね」
「あの時は本当に浮気だと思ったのよ。霜平さんのこと知らなかったし」