身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました

 雑談をするような調子で話すふたりを見て、ずっと聞きたかったのに聞けずじまいだったことを思い出し、遠慮がちに問いかける。


「あの、ふたりはいつからそういう仲に……?」
「変な言い方やめて。ただ片想いしてる者同士ってだけよ」


 煙たそうに答える鈴加さんだが、わりと息が合っているし一周回って仲がいいんじゃないだろうか。こうして一緒に来るぐらいだし。

 朝陽くんは思い返すように目線を宙にさ迷わせ、さらに詳しく教えてくれる。


「鈴加さんがかづ兄の秘書になってから俺たちも顔を合わせるようになって、『あの日都さんと一緒にいましたよね』って話しかけられてさ。あの頃は普通にいい子だと思ってたから、お互い実は恋心があるって話も打ち明けてたんだ」


 私はふむふむと頷く。初対面の時みたいな愛想のいい彼女だったら、信頼してプライベートなことを話していてもおかしくない。

 というか、朝陽くんと話していたなら浮気じゃないとわかっていたはず。にもかかわらず、お母様や嘉月さんを惑わせていたのだから、やっぱり鈴加さんって腹黒いな……うん。
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