身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
「それが一年くらい経った頃に、鈴加さんが煙草吸ってるところに出くわして。この人すっごい猫被ってるな!って気づいてからは、腹の内を探りつつ接してた感じかな」
「煙草って言っても電子煙草ね」
すかさず訂正する鈴加さんだけど、こんなに可愛い顔して煙草も吸うとは……いいキャラしてるな。
どうやら今日は、鈴加さんがお母様にした一部始終を知った朝陽くんが、『都ちゃんに謝ろう』と説得してくれたのだそう。彼女がそれに従順に従ったところからして、きっと反省しているのだろう。
「でも、この〝報われない恋同盟〟も今日で終わりだ」
すっきりした様子で朝陽くんが言った。鈴加さんは長い前髪を耳にかけ、なぜだか色香を漂わせてテーブルの上で頬杖をつく。
「同盟を〝恋人〟に変えてもいいけど?」
ゆるりと口角を上げ、急に恋愛上級者みたいなアプローチをしだす彼女。
え、やっぱり朝陽くんのことまんざらでもないんじゃ?と、ドキッとして成り行きを見守ろうとしたものの……。
「ごめん、無理」
「もうちょっと考えたら?」
手の平を向けてあっさり断る朝陽くんに、鈴加さんは口の端を引きつらせた。