身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
やっぱり素敵な人だなと思い、私も顎の下で手を組んでラブコールを送る。
「里実さん……大好き」
「俺も」
にっこり微笑んで続く朝陽くんに、里実さんは真っ赤な顔で後ずさりして「はぁぁぁ!?」と叫んだ。そのまま魂が抜けてしまいそうだったので、朝陽くんが王子様のごとく助けに向かう。
乙女ゲームではなく本物の恋愛が始まりそうなふたりに、私も心を躍らせる。一方、鈴加さんはものすごくつまらなそうな顔をして「付き合ってらんない」とぼやいた。
席を立って歩き出すので慌てて見送ろうとすると、彼女はぴたりと足を止めてこちらを振り返る。
「わかってると思うけど、私はあなたが気に食わないの」
「ほんっと包み隠しませんね……」
私以上に正直でしょ、と苦笑いするも、彼女は構わず話し続ける。
「なにを言ったってへこたれないし、いつも痛いところを突いてくるから。最近はただ意固地になって、大人げないことばかりしていたのかも。副社長が好きだっていう、純粋な想いはどこに行っちゃったのかしらね」
私への嫌味を言うのかと思いきや反省している様子で、徐々に声に切なさが交じるのがわかった。しかし、心なしかすっきりしているようにも見える。