身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
ところが、お父様が好きだった嘉月さんは、実は内緒でこっそり会っていた。そのうち自分に弟がいることを知り、お互い大人になってからも兄弟で時々会っているのだという。
以前聞いた話によると、朝陽さんは私のひとつ年上の二十五歳で、セーライの取引先の精密機器メーカーで営業をしている。嘉月さんの大切な弟である彼のこと、もっと聞いてみたい。
「朝陽さんはどんな人ですか?」
「俺とは違って愛想がよくて、誰とでもすぐに仲よくなるタイプだ。陽キャってやつか」
嘉月さんの口から〝陽キャ〟という単語が出るのがなんだかおかしい。クスクスと笑いながら相づちを打つ。
「そっか。普通の兄弟でも性格は違いますしね」
「ああ……違いすぎるな。性格も顔も、生き方も」
彼は心なしか力なく言い、ふっとまつ毛を伏せた。その横顔は妙に寂しげに見える。
「俺は暗くて静かな月で、弟は周りも明るくする太陽。俺たちの事情を知ってる仲間からは、ふたりともイメージぴったりな名前ですごいなって言われるよ」
再び上を向いた顔はやはりどことなく憂いを帯びていて、口調もなんだか自嘲しているように聞こえる。