身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました

「好きだ、都」


 奥深くでひとつになったとき、吐息交じりの声が耳元で囁いた。

 胸一杯に幸せが広がり、私は閉じていた目をゆっくり開く。色気が溢れる彼の顔を視界に映し、とろけた笑みを浮かべた。


「好きって、初めて言ってくれましたね。ちゃんと聞けて嬉しい」
「そうだったか……毎日想ってるから伝えた気になっていた」


 一瞬、獣から素に戻ったような嘉月さんにふふっと笑う。さらりと嬉しい言葉をくれるあなたが、私も大好きだ。

 彼は動かないまま私の左手を取り、薬指にキスを落とした。そして、情熱を湛えた瞳で私をしっかりと捉える。


「都、俺と結婚して。これからも毎日、愛してると言わせてくれ」


 ……もう婚約者なのに。きちんとプロポーズしてくれたのが、涙ぐむくらい嬉しい。

 私たちは政略的ではなく、愛しているから結婚するのだ。そう確信しながら「はい」と応える。


「私も、嫌ってほど言うから。大好きです、嘉月さん」


 綺麗な顔を両手で包み込んで伝えると、彼は嬉しそうな笑みをこぼして「嫌になんかならないよ」と返した。

 誓い合うようにキスをして、再び快楽の波に呑まれていく。これからこんなふうに愛し合う日々が送れるなんて幸せすぎてどうにかなりそうだと、今まさに上り詰めてしまいそうな意識の中で恍惚としていた。


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