身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
「このホイップクリームの味、どう? 仕入れてる生クリームが変わったから一応確かめてもらおうかなって。私は前よりコクが増したような気がするんだけど」
「なるほど、いただきます」
ふむふむと頷いて受け取り、ホイップクリームを口へ運んだ。まったりした甘さが広がり、確かにこれまでのクリームよりコクが感じられる。
しかし、そこで妙な違和感を覚えた。味は間違いなく美味しいのに、もうひと口食べようという気になれない。これはクリームに問題があるのではなく、私自身がおかしいのだ。
異変に気づくも、表面上は平静を装って答える。
「私もそう思います。こっちのほうがパンケーキに合いそう」
「だよね! よかった、これからもこれでいけそうね」
生き生きしている里実さんに笑みを返し、まだクリームが残っている小皿をそっと置いた。
なんでだろう。これくらい、いつもならペロッと食べてしまうのに、今日はひと口食べただけで胃がもたれるような感じがする。なんとなく気持ち悪いというか……。
ホールへ戻りながら考えを巡らせていたとき、ふいにあるひとつの可能性が浮かび、はっとして息を呑んだ。
しばらくして休憩に入った私は、更衣室に入るや否やバッグからスマホを取り出す。アプリのカレンダーを確認して、ドクンと心臓が大きな音を立てた。
前回生理になったのは一カ月と少し前で、今月はまだ来ていない。まさか……。
呆然とする私は、信じられない気持ちでそっとお腹に手を当てた。