身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
思い出はジュエリーボックスに閉じ込めて
妊娠検査薬で陽性反応が出た三日後、休みだった私は実家から近くて評判のいい産婦人科へ向かっていた。
嘉月さんのマンションからは車で二十分以上かかるが、実家からは徒歩十五分で行ける。きっと出産前後は実家のお世話になるだろうし、こちらのほうがいいだろうと考えた。
午前十時、六月に入って間もない今日は、朝から強い日差しが降り注いでいる。最高気温は三十度近くになるらしく、もう夏じゃないかとため息をつく。
夏は嫌いじゃないが、いまいち体調が優れないのだ。気持ち悪さはないものの、身体が重くてだるい。これはつわりの症状なのだろうか。
とはいえ、今日を逃したらまたしばらく病院に行ける日がないので、自分を奮い立たせて家を出た。
しかし、やはり調子が悪くて足取りは重くなる。あと五分ほどで産婦人科に着くというところで、暑さのせいもあるのか頭がクラクラしてきた。
やばい、と思ったときには身体がふらついて、なんとかバランスを取ろうと耐えようとした。その瞬間。
「大丈夫ですか!?」
後ろから来た誰かに身体を支えられ、転ぶのは免れた。救世主のようなその人物を見上げ、慌ててお礼を言う。