身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました

 翌日の金曜日、私も仕事だったのでヱモリから直接待ち合わせ場所の駅前広場へ向かった。嘉月さんはもうすぐ電車で帰ってくる予定だ。

 今日はありがたいことに調子がよく、夕食も普通に食べられそう。せっかく彼がレストランを予約してくれたのに、食欲がなかったら悲しいもの。

 広場に着いたのは私が先だった。時折強い風が吹くので、なびく髪を押さえてやや緊張しながら彼を待つ。

 そこへ、三人で手を繋いで歩く仲睦まじい親子が通りかかった。びゅうっと風が吹くたび「きゃー!」と声を上げる女の子と、それを見て笑う両親も楽しそうだ。

 数年後の自分たちを想像して彼らと重ねて微笑ましく見ていると、ちょうど視線の先からこちらへ待ち人が小走りでやってくる。荷物はロッカーに置いてきたのか、持っているのはビジネスバッグだけで身軽だ。

 私が破顔して手を振ると、彼もゆるりと口角を上げた。


「嘉月さん! 出張お疲れ様でした」
「都もお疲れ。悪い、待たせて」
「全然待ってないよ」


 お決まりの挨拶をし、賑わう駅前広場を過ぎた静かな通りにあるレストランを目指して手を繋いで歩き出す。これから重大発表をすると思うと落ち着かなくて、無意識にお腹を触りながら。
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