身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
けれどその前に、ひとつ相談がある。
「ねえ、嘉月さん。朝陽くんと会っていること、お母様に打ち明けない?」
飲食店の少ない歩道に差しかかった辺りで切り出すと、彼は意外そうな顔をして私を見下ろした。私は苦笑を漏らし、最近考えていたことを話し出す。
「私、嘘つくの下手なの。つい昨日、偶然朝陽くんと会ったんだけど、それも内緒にしなきゃいけないとなると、私きっとボロが出ちゃうと思うから」
これからお母様と会う頻度は多くなっていくだろう。そのたびに知らないフリをして、心苦しくなるのは嫌だ。
「それに、朝陽くんと会うのはなにも悪いことじゃないって納得してもらいたいなって。母親が違っても立派な兄弟で、お互いを大切に思い合っているんだし、コソコソしたくないじゃない」
嘉月さんと私、そしてお腹の子とで新しい家族を作っていくことはできる。それだけじゃなく、今いる家族とも幸せになってほしいという願いを込めて伝えた。
やや面食らったような顔をしていた嘉月さんは、ふっと気が緩んだ笑みをこぼす。
「そうだな、君は隠し事ができる人じゃない」
「あ、でも秘密を守れないわけじゃないからね?」
「わかってる。俺はすごく好きだよ。都のそういうまっすぐなところ」