身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました

 嘉月さんこそストレートで、鼓動が喜ぶように軽く跳ねた。一度空を仰いだ彼は、スッキリとした表情になっている。


「都の言う通りだな。ちゃんと母さんとも向き合おう」


 納得した調子で頷いてくれて、私もほっとした。いつかはお母様の憎しみも薄れていってほしい。

 やっぱり家族は仲よしが一番だよね。と、お腹に手を当てて心の中で声をかけていると、嘉月さんが眉根を寄せて私の顔を覗き込む。


「さっきから腹を押さえてるが、痛いのか? 調子が悪いなら、それこそ隠していないで正直に言ってくれ」


 核心を突かれてドキリとすると同時に、しまった……という気持ちになる。食事した後にエコー写真を見せて驚かせようと思っていたのに、ロマンチックのかけらもない道端でこの流れになるなんて。

 自分に呆れつつ、「やっぱり隠し事はできないんだなぁ、私」と苦笑交じりにひとりごちた。

 足を止め、意を決して彼と向き合う。


「痛いわけじゃないの。愛しいだけ」
「愛しい?」
「ここに来てくれたから。嘉月さんと、私の赤ちゃんが」


 ちょっぴり照れながら告白すると、嘉月さんは真顔で固まる。数秒経ってやっと理解できたらしい彼は、バッと口元を片手で覆った。
< 65 / 276 >

この作品をシェア

pagetop