身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
結局その日は家に帰り、翌日また面会をしに出向いた。きっとお母様も来たはずだが、偶然時間がずれたようで会うことはなかった。
嘉月さんの容体は変わらず、目を覚ます気配はなさそうで不安が募る。家では皆が私を励ましてくれたけれど、気持ちは落ち込む一方。赤ちゃんに申し訳ないと思いながらも、食事も喉を通らなかった。
妊娠について報告するどころではなくなり、母子手帳ももらいに行けていない。本当なら今頃、嘉月さんと一緒にこの奇跡を喜んでいたはずなのに。
部屋でひとりきりになると自然に涙が出てきて、ただベッドに伏せるしかなかった。
しかし警察から事情を聞かれ、事故の詳しい状況がわかってきて、別の問題が浮き彫りになってきた。嘉月さんを襲った看板の店が、明河商事の子会社の店舗だったのである。
もちろん管理していたその店の責任だというのに、彼らは非を認めていないらしい。父は憤慨して店側と話し合っている最中だが、この件については青來家も黙ってはいないだろう。
私たちは政略結婚だ。明河商事の信頼を失ったらセーライとの取引もなくなり、婚約も破棄せざるを得なくなるかもしれない。