身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
「この間はごめんなさい。事故は都さんのせいではないのに、責めてしまって」
大切な息子があんな状態になってしまった直後だったのだ。責めたくなるお母様の気持ちもわかるので、私は「いえ」と首を横に振った。
ところが彼女の表情は強張ったままで、伏し目がちに言う。
「あなたのせいではないけど、これからも関係を続けていくのは難しいかもしれないわね」
恐れていた婚約破棄を示唆しているような発言。不安が増大して、胸が急激に苦しくなるもなんとか言葉を紡ぐ。
「……事故の過失のせいですか?」
「それだけじゃないわ」
他になにがあるのかと眉をひそめると、お母様は「とりあえず会ってみて」と言い、病室の扉に手を伸ばす。
ようやく開かれたその個室からは、和やかに話す声が聞こえてきた。それが途切れて、ベッドに横たわる嘉月さんと、その脇に立つ伯父様がこちらに視線を寄越す。
彼の焦点が私に合っただけで胸が一杯になり、「嘉月さん!」と名前を呼んでベッドに駆け寄る。
「よかったぁ……! よかった、本当に……」
ちゃんと目を開けている彼を見下ろして、溢れてくる涙を何度も手の甲で拭った。