身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
沈痛な面持ちで告げられ、これまでの愛しい日々が一気に色褪せていくのを感じた。
今の彼にとって、私はただの他人……そんなの、信じたくない。あんなに愛し合ったのに、すべてなかったことになってしまうなんて。
「可能性はゼロではないんですよね。私が直接話をすれば、きっと思い出して──」
「やめて、目を覚ましたばかりなのよ。混乱してしまうわ」
ドアに手をかけようとしたものの、すぐにお母様に阻止されてしまった。確かに、無理に記憶を引き出そうとするのはよくないかもしれない。
だらりと力なく手を下ろす私の耳に、お母様の冷ややかな声が届く。
「今だけじゃない。これからも思い出させないでほしいの。あなたとのことを」
到底納得できない言葉が投げかけられ、大きな衝撃を受ける。
「どうして……⁉」
「数日前に、ある人からこれが送られてきたわ」
唖然とする私に差し出されたものは、彼女のスマホ。その画面に映っている画像を見て目を見開いた。
男女が道端のベンチに並んで座り、肩が触れ合うくらいの距離で話をしている。私が産婦人科に行く途中で具合が悪くなり、朝陽くんに助けられたときのものだ。