身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
「都さん、私が言ったことを覚えているわよね? 『疑わしいところを見つけたら、それなりの対処をさせてもらう』って」
言葉を失ったままの私を、厳しい視線が捉える。
「嘉月との結婚は諦めてくださる?」
もう一度きっぱりと告げられ、背中に冷や汗が伝った。
お母様との約束はもちろん覚えているけれど、朝陽くんも私も後ろめたいことはなにもない。それなのに黙って別れを受け入れるなんて、到底できるはずがない。
私は小さく深呼吸して気持ちを落ち着かせ、わかってほしい一心で口を開く。
「お母様、本当に誤解です。彼は、具合が悪くなってふらついていた私を助けてくれただけなんです。やましいことはなにもしていません」
お母様は、明らかに敵意を剥き出しにしてこちらをじっと見ている。しかし、私も視線を逸らさない。
「私が愛しているのは、嘉月さんだけです。彼は絶対に信じてくれる──」
「それは無理でしょうね。あの子の中に婚約者としての都さんはいないんだから」
鋭利な刃物のように現実を突きつけられ、息ができなくなりそうになった。