身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました

 そうだ、彼は私との記憶を失っている。私の身の潔白どころか、愛し合っていた事実すらも信じられないかもしれない。

 口をつぐむ私に、お母様は暗澹とした声で続ける。


「浮気の件がなくても、このまま関係を続けるのは難しいんじゃないかしら。半年間も記憶を失った状態で業務に復帰するのにもかなりの苦労を強いられるのに、結婚話まで出したらさらに負担をかけるだけじゃない。急に入籍して式も挙げるなんて、気持ちが追いつかないのは想像すればわかるでしょう」


 それは一理あり、私は唇を嚙みしめる。

 婚約しているだけじゃなく、私には新しい命が宿っているのだ。記憶を失った彼に、いきなり子供が産まれるという事実を話しても受け入れてもらえるだろうか。

 それこそ負担になってしまうし、私だけでなく子供に愛情が湧くかどうかもわからない。

 お母様たちにも妊娠していると打ち明けていいものか。浮気を疑われている状況では、嘉月さんとの子だと信じてもらえるとは限らない。

 口を閉ざしたままの私に、伯父様が心苦しそうな表情で向き直る。
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