身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
姉が自分のことのように悩んで、親身になってくれるのは本当にありがたい。しかし過失の件がなくても、お母様が言っていた通り私の存在が嘉月さんの負担になると思うと、離れた方がいいのかもしれない。
父は徐々に怒りを滲ませる。
「なにより、芳枝さんは都の言い分に聞く耳も持たず突き放したんだろう? それに対しては俺だって許せないし、薄情な家に大事な娘を嫁がせたくはない」
私を責めるお母様の姿が脳裏をよぎり、ひりひりと胸が痛む。父が怒るのも仕方ないだろうが、どんどん解決の糸口が見えなくなっていく。
眉根を寄せたままの私に、父がわずかに優しさを取り戻した声で「都」と呼びかける。
「俺たちはお前の味方だからな。お腹の子のことは心配しなくていい」
私を気遣うその言葉には、嘉月さんと別れても大丈夫だという意味が含まれているのがわかり、複雑な気持ちで一杯で瞳が潤んだ。
それからも話し合いは続いたが堂々巡り。私も答えは出せなくて、わが家にはしばらく重い空気が続いた。