身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
結局、父は事故を起こした店側を説得し、きっちりと責任を取らせた上で謝罪させることができた。
なんとか裁判は免れられたが、青來家との間で開いてしまった溝は埋められず、取引は白紙に。同時に、婚約破棄も決まった。
私はどうしても受け入れられなくて、なんとかならないものかと頭を悩ませ続けた。
愛する人との別れは、そう簡単に決められない。しかしお母様の言う通り、一緒にいるのは必ずしもいいとは限らないのかもしれないとも思う。
事故が起こってからの数日で私はすっかり精神的に参ってしまい、抗う気力も出せなくなっていた。このままでは、仕事にも赤ちゃんにも影響が出るかもしれない。
彼との明るい未来が見出せない。ご家族の信用を失ってしまい、私の父も反対している。なにより彼の負担になると思うと、もう諦める以外の道は塞がれたように感じた。
眠れない夜を過ごしながら悩んで悩んで、私はついに決意した。そしてあの日以来、約十日ぶりとなる嘉月さんのもとへ足を運ぶ。
貧血気味なせいもあり重い足取りで向かった病室の前で、財布を持って出てきたお母様と鉢合わせした。私は顔を強張らせる彼女に頭を下げ、口を開く。