身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
「おはよう、都。休みなのに朝早くから悪いな」
「いいんだよ。どうせ昴に起こされるし」
野菜を切りながら言うと、父は「そうか。ありがとう」と笑みをこぼした。
私は今もヱモリで働いている。姉も明河商事に勤めているので、食事の用意はどちらかができるときにやる感じだ。男性陣は他の家事は手伝ってくれるが、料理だけは遠慮したいらしい。
なっちゃんが自分のことは自分でできるようになってきたので、姉が作ってくれる時が多くとても助かるけれど、甘えてばかりいたくはない。
シングルマザーとはいえ実家にいて、皆のサポートを受けられる私は恵まれているだろう。
それでも、どうしようもないときは家族に頼りつつ、できるだけ自分の力で昴を育て上げたいと思っている。彼のたったひとりのママとして胸を張れるように。
仕事復帰したのもそれがひとつの理由。昴が一歳になった一年前、父たちは焦らなくてもいいと言っていたけれど、世話になりっぱなしでいたくないから働こうと決めた。
ヱモリに再び勤めるのにはいろいろな葛藤もあって一度は辞めようとした。しかし、ワケあってまた戻ることになったのだ。
今はもう、ヱモリに嘉月さんが来ることはないし──。