身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
物思いに耽りつつオムレツを焼いていた私は、ふいに我に返る。リビングに目をやると、昴は難しい顔をして真剣に積み木を重ねていた。
このむうっとした顔がまた可愛い。微笑ましくなる半面、どことなく嘉月さんに似ていて少し切なくもなる。
彼を忘れた日などない。今も、婚約者だった頃のわずか数カ月の日々を脳裏によぎらせながら、手際よく朝食を仕上げていく。
姉たちは昨日から一誠さんの実家にお泊まりしているため、私と父、昴の三人分をダイニングテーブルに並べた。
「昴、ご飯~」
「あい」
声をかけるとちゃんと返事をして、自分がいつも座っている席にとととっとやってきた。大人と一緒に座りたがるので、ダイニングテーブルに合わせたハイチェアを使っているのだが、彼はもう自分で昇り降りできる。
皆でいただきますをした後、さっそくスプーンを使って食べ始めた。飲み物を用意し忘れた私はキッチンに戻り、昴のコップに牛乳を注ぎながらその様子を見て言う。
「おっ、スプーンもお椀も上手に持てるようになってきたね。補助箸はいつから持たせたらいいんだろう。昴はできる子だから……」