―あすなろの唄―
だから氷ノ樹とあたしは決断をした。
一か八かの分離手術という道を。
あたし達の決意を知って、両親もお医者様もこの想いを受け入れてくれた。
受け止めてくれた。
でも……知っているの。
あたしだけは──分離をしたら、氷ノ樹は助からないということを。
氷ノ樹の首から上は、あたしと同じ年相応だ。
でもその下は……とても未熟な状態のまま。
全ての臓器は備えているけれど、どれも幼児期から成長していない。
だから彼はいつもあたしの肩にしがみついて、あたしの動きに寄り添ってきた。
「離れれば、君の口から摂取したエネルギーは、全て君の身体を造る要素となるからね」
お医者様は兄にそう告げて微笑んだ。
でも……本当のところは違うのだ。
氷ノ樹だけが眠りに落ちた一週間前、あたしは寝た振りをしながら聞いてしまった。
手術がどんなに完璧だったとしても、兄の身体は朽ちるのだと。
両親とお医者様はあたし達の意を汲みながら──あたしだけでも生かそうと覚悟したのだ。
だからあたしも覚悟したの。
氷ノ樹の分まで生きてあげる。
これからは一人の身体で、二人分の素晴らしい人生を生きてやる。
「ね、氷ノ樹。この間途中になってしまった宇宙のお話の続きを聞かせて?」
歌い終えて満足した様子の静かな兄に、あたしは最後のおねだりをした。
──彼が居なくなる前に、彼の全てを手に入れよう。
一か八かの分離手術という道を。
あたし達の決意を知って、両親もお医者様もこの想いを受け入れてくれた。
受け止めてくれた。
でも……知っているの。
あたしだけは──分離をしたら、氷ノ樹は助からないということを。
氷ノ樹の首から上は、あたしと同じ年相応だ。
でもその下は……とても未熟な状態のまま。
全ての臓器は備えているけれど、どれも幼児期から成長していない。
だから彼はいつもあたしの肩にしがみついて、あたしの動きに寄り添ってきた。
「離れれば、君の口から摂取したエネルギーは、全て君の身体を造る要素となるからね」
お医者様は兄にそう告げて微笑んだ。
でも……本当のところは違うのだ。
氷ノ樹だけが眠りに落ちた一週間前、あたしは寝た振りをしながら聞いてしまった。
手術がどんなに完璧だったとしても、兄の身体は朽ちるのだと。
両親とお医者様はあたし達の意を汲みながら──あたしだけでも生かそうと覚悟したのだ。
だからあたしも覚悟したの。
氷ノ樹の分まで生きてあげる。
これからは一人の身体で、二人分の素晴らしい人生を生きてやる。
「ね、氷ノ樹。この間途中になってしまった宇宙のお話の続きを聞かせて?」
歌い終えて満足した様子の静かな兄に、あたしは最後のおねだりをした。
──彼が居なくなる前に、彼の全てを手に入れよう。