【奏】きみにとどけ
次の日


学校に行くと

色々な噂が飛び交っていた。




俺が横からちょっかいだしただの


正村が略奪&取り返しに成功しただの



もうどうでもいいと思った。






ただ、野々瀬は正村を受け入れたんだろうな



そう感じて、心が痛くなる。





だけど、それがどうしようもない現実。



なら、受け入れるしかない。




そう諦めながら

教室に入ると

もう野々瀬は来てた。




こういう時、隣の席って不便だな。




いつもなら、野々瀬が先に来てると


後ろから声をかけるけど


何て言ったらいいのか


どういう表情したらいいのか


わからなくて、そのまま席に座った。





何より、野々瀬の表情を見たくないと思った。





嬉しそうにしてたら胸が痛いし


申し訳なさそうにしてたら


どうすりゃいいかわかんねぇし…。



だって、あれって告ったようなもんだろ。



『椎野くん

おはよ』



いつも通りの声に


反射的に野々瀬の顔を見てしまった。



いつもと同じ笑顔。



けど…それは嬉しい笑顔―――なんだろ?




「あぁ、おはよ」




『昨日、映画』




昨日の話は聞きたくねぇ。




「椎野~?」



「あぁ?」



タイミングよく声をかけられ


野々瀬は何か言おうとした言葉を

押し込めた。



すっげぇホッとする自分がいた。



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