【奏】きみにとどけ
話しかけてきたのは別のクラスの友達。


「昨日さぁ

水ポチャして携帯データー全部パーだぜ」




「そりゃ災難だったな」



「だから、もう一回教えてくれ」



「おう」



俺はポケットから携帯を取り出し

赤外線通信で番号を送った。




野々瀬が俺を見て

目を見開いたけど


――…何に驚いてんだ?




野々瀬とも番号もメアドも交換してるけど


あんまり携帯に執着がない俺を


知ってか知らずか



それとも俺には興味ないのか


野々瀬とはあんまりメールも

電話もした事ない。




だけど、野々瀬がくれたメールは


何でもない日常でも保護してんだ。



女々しい奴だよな。




後で消しとかなきゃな。




番号を送った後

教室に帰るのを見届けて

俺は携帯を開いた。




メールを見つめる。




〝明日、楽しみだね"


〝今日はありがとう"


〝おやすみ"



何の変哲もないメールなのに


消すのを躊躇してしまう。



そんなんじゃ

友達に戻れないだろ。



≪選択したメールを削除します
よろしいですか?

はい いいえ≫




はい











を、押そうとした瞬間


斜め上から影が落ちてきた。




何だよ?


誰だよ?





見上げた先に…野々瀬がいた。




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