【奏】きみにとどけ
初めて恋をした訳でもねぇのに
こんな始まりを…
こんな恋の始まりになるとは
思ってなかった。
噂を聞いてたから……
間違いなく
野々瀬は別れた男の事で泣いてる。
すぐわかった。
だってタイミング的に…間違いないだろ?
野々瀬が…
手で頬に流れる涙を拭うのを見た瞬間
静かに教室から離れ
わざわざ足音を立てて廊下を走った。
次に見るときは
どうか…もう…
泣き顔じゃありませんように―――っと…。
バンッ
勢い余って
思いっきりドアに肩をぶつけた。
「……痛ってぇ」
俺ってとことん馬鹿だよな。
そう思いながら
恐る恐る視線を向けた。
その先には―――。