白い結婚なので離縁を決意したら、夫との溺愛生活に突入していました。いつから夫の最愛の人になったのかわかりません!
誰が最愛ですか
やっとフィルベルド様が、仕事に行き、私はこのお城の豪華な部屋に残されている。
美味しそうな昼食もこの部屋に用意してくれて、至れり尽くせりだと思う。
でも、ソファーに座っても、立って部屋をウロウロしても落ち着かない。
私は、どうしてここにいるんだろう。
屋敷が全焼したことも気になるけど、それは騎士団が調べるだろうし……。
火事も気になるけど、フィルベルド様も気になる。
まるで、私を気にしているような素振りに困惑するけど、私には、彼に好意を向けられる理由はない。
何故なら、彼とは一度しか会ったことがないし、再会するまで彼とは交流さえ無かったのだ。
しかも、私は、一目惚れされるような美女ではない。
「……失礼します」
ノックの音がして、入って来たのは茶髪の男性だ。確か、朝食を食べた時にフィルベルド様が彼にメニューを頼んでいた。
「初めまして。奥様。フィルベルド様の部下のルトガー・ケインズといいます。第二騎士団の副団長を務めています」
「……おくさま?」
「フィルベルド様の最愛の奥様と伺っております」
……誰が? 誰がフィルベルド様の最愛ですか?
自分の耳に自信がなくなるほど、私とは関係ないワードが聞こえる。
聞かなかったことにするしかない。
今は、フィルベルド様がいつ戻って来るか、ドキドキしているから。
「……ルトガー様。どうか、ディアナとお呼びください」
「かしこまりました。では、ディアナ様……と」
フィルベルド様よりも柔らかな笑顔で返されて、人当たりのよさそうな青年に見えた。
「なにかご用はないかと、お聞きに来ました。欲しいものがあれば、すぐに手配いたします」
「欲しいものはありませんが……少し外出しても? 夕食には、必ず帰りますから……」
「では、ご一緒いたしましょう。フィルベルド様は、少し席を外せませんので……」
「一人で行きます。お仕事のお邪魔をするわけには……」
「屋敷のこともありますし、ディアナ様になにかあれば大変です」
屋敷全焼は気になるけど……ルトガー様を見ると、「では、行きましょう」とすでに扉を開けている。
仕方ない。ここで、あのワケわからないフィルベルド様が来るのを待つよりもいいはずだ。
そのまま、ルトガー様と部屋を出て城から出るために長い廊下を歩いていた。
外廊下は、風通しが良く朝よりも温かい。フィルベルド様と初めて一緒に見たアクスウィス公爵邸のバラ園と違い、ここの庭は緑で整えている。それでも、フィルベルド様と一緒に庭をついて行ったことを思い出した。
「……この庭は、騎士たちが良く休憩に使ったりもします。奥には、ガゼボもありますから、今度フィルベルド様とご一緒すると良いですよ」
「……フィルベルド様は、お仕事ですから……お邪魔はしません」
そもそも、フィルベルド様は私と一緒に住む気はなかった。
今回は、きっと屋敷が全焼したから、気にしているだけだと思う。
私たちには、お互いを知る機会はなかったのだから、好意があるはずがない。
そのまま、外廊下を進み馬車乗り場に行くと、一組の男女が目に付いた。
綺麗なクリーム色を巻いている女性を、金髪の男性がエスコートしている。
フィルベルド様だ……。
フィルベルド様の出した手に、女性はそっと乗せて馬車に乗り込んでいる。
やっぱり私に好意があるのは、勘違いだ……。フィルベルド様には、綺麗な女性が側にいる。
昼食も、フィルベルド様はきっとあのご令嬢と摂ったのだと思う。
「あれは……」
「あぁ、殿下の見舞いに来られていたご令嬢です。お見送りをしていますね」
「殿下の? ……わざわざお見送りをされるんですね」
「あの方は、公爵令嬢ですし、部屋で寝込んでいると思われたくないんでしょう」
でも、殿下じゃなくて、フィルベルド様がお見送りをすれば殿下は部屋にいるままに思える。
それとも、先ほどまでは殿下もお見送りに来ていたのだろうか……。
でも、彼女を見送るためにフィルベルド様は席を外したのだ。
騎士団長自らお見舞いに来た令嬢を送るなんてちょっと考えられない。
フィルベルド様は、彼女に会いたかったのかもしれない。
「……フィルベルド様は、人気がおありなんでしょうね……」
「すごく人気はありますね。あの容姿に騎士団の団長ありながら、次期公爵ですから……ですが、気にすることはありません。寄って来る女性は大勢いますけど、フィルベルド様には、ディアナ様がいますから」
「……私たちは、白い結婚です」
やはり、フィルベルド様とは早く離縁するべきだ。彼には、他に女性がいる。私がいるせいで結婚できないのかもしれない。
どうして、あんな好意があるような態度を取るのかわからないけど……私はフィルベルド様に相応しくない。
そのまま、ルトガー様とフィルベルド様の見送った馬車を見ていた。令嬢の馬車が見えなくなると、フィルベルド様が踵を返した。そして、私とルトガー様に気付き足がピタリと止まる。
ルトガー様は、そんなフィルベルド様に頭を下げる。それに合わせて私も頭を下げた。
フィルベルド様は、それを見て早足でどこかへ行ってしまった。
美味しそうな昼食もこの部屋に用意してくれて、至れり尽くせりだと思う。
でも、ソファーに座っても、立って部屋をウロウロしても落ち着かない。
私は、どうしてここにいるんだろう。
屋敷が全焼したことも気になるけど、それは騎士団が調べるだろうし……。
火事も気になるけど、フィルベルド様も気になる。
まるで、私を気にしているような素振りに困惑するけど、私には、彼に好意を向けられる理由はない。
何故なら、彼とは一度しか会ったことがないし、再会するまで彼とは交流さえ無かったのだ。
しかも、私は、一目惚れされるような美女ではない。
「……失礼します」
ノックの音がして、入って来たのは茶髪の男性だ。確か、朝食を食べた時にフィルベルド様が彼にメニューを頼んでいた。
「初めまして。奥様。フィルベルド様の部下のルトガー・ケインズといいます。第二騎士団の副団長を務めています」
「……おくさま?」
「フィルベルド様の最愛の奥様と伺っております」
……誰が? 誰がフィルベルド様の最愛ですか?
自分の耳に自信がなくなるほど、私とは関係ないワードが聞こえる。
聞かなかったことにするしかない。
今は、フィルベルド様がいつ戻って来るか、ドキドキしているから。
「……ルトガー様。どうか、ディアナとお呼びください」
「かしこまりました。では、ディアナ様……と」
フィルベルド様よりも柔らかな笑顔で返されて、人当たりのよさそうな青年に見えた。
「なにかご用はないかと、お聞きに来ました。欲しいものがあれば、すぐに手配いたします」
「欲しいものはありませんが……少し外出しても? 夕食には、必ず帰りますから……」
「では、ご一緒いたしましょう。フィルベルド様は、少し席を外せませんので……」
「一人で行きます。お仕事のお邪魔をするわけには……」
「屋敷のこともありますし、ディアナ様になにかあれば大変です」
屋敷全焼は気になるけど……ルトガー様を見ると、「では、行きましょう」とすでに扉を開けている。
仕方ない。ここで、あのワケわからないフィルベルド様が来るのを待つよりもいいはずだ。
そのまま、ルトガー様と部屋を出て城から出るために長い廊下を歩いていた。
外廊下は、風通しが良く朝よりも温かい。フィルベルド様と初めて一緒に見たアクスウィス公爵邸のバラ園と違い、ここの庭は緑で整えている。それでも、フィルベルド様と一緒に庭をついて行ったことを思い出した。
「……この庭は、騎士たちが良く休憩に使ったりもします。奥には、ガゼボもありますから、今度フィルベルド様とご一緒すると良いですよ」
「……フィルベルド様は、お仕事ですから……お邪魔はしません」
そもそも、フィルベルド様は私と一緒に住む気はなかった。
今回は、きっと屋敷が全焼したから、気にしているだけだと思う。
私たちには、お互いを知る機会はなかったのだから、好意があるはずがない。
そのまま、外廊下を進み馬車乗り場に行くと、一組の男女が目に付いた。
綺麗なクリーム色を巻いている女性を、金髪の男性がエスコートしている。
フィルベルド様だ……。
フィルベルド様の出した手に、女性はそっと乗せて馬車に乗り込んでいる。
やっぱり私に好意があるのは、勘違いだ……。フィルベルド様には、綺麗な女性が側にいる。
昼食も、フィルベルド様はきっとあのご令嬢と摂ったのだと思う。
「あれは……」
「あぁ、殿下の見舞いに来られていたご令嬢です。お見送りをしていますね」
「殿下の? ……わざわざお見送りをされるんですね」
「あの方は、公爵令嬢ですし、部屋で寝込んでいると思われたくないんでしょう」
でも、殿下じゃなくて、フィルベルド様がお見送りをすれば殿下は部屋にいるままに思える。
それとも、先ほどまでは殿下もお見送りに来ていたのだろうか……。
でも、彼女を見送るためにフィルベルド様は席を外したのだ。
騎士団長自らお見舞いに来た令嬢を送るなんてちょっと考えられない。
フィルベルド様は、彼女に会いたかったのかもしれない。
「……フィルベルド様は、人気がおありなんでしょうね……」
「すごく人気はありますね。あの容姿に騎士団の団長ありながら、次期公爵ですから……ですが、気にすることはありません。寄って来る女性は大勢いますけど、フィルベルド様には、ディアナ様がいますから」
「……私たちは、白い結婚です」
やはり、フィルベルド様とは早く離縁するべきだ。彼には、他に女性がいる。私がいるせいで結婚できないのかもしれない。
どうして、あんな好意があるような態度を取るのかわからないけど……私はフィルベルド様に相応しくない。
そのまま、ルトガー様とフィルベルド様の見送った馬車を見ていた。令嬢の馬車が見えなくなると、フィルベルド様が踵を返した。そして、私とルトガー様に気付き足がピタリと止まる。
ルトガー様は、そんなフィルベルド様に頭を下げる。それに合わせて私も頭を下げた。
フィルベルド様は、それを見て早足でどこかへ行ってしまった。