白い結婚なので離縁を決意したら、夫との溺愛生活に突入していました。いつから夫の最愛の人になったのかわかりません!
壊れそうな夫
フィルベルド様は、離縁状を憎々しく見ているかと思うといきなり離縁状にボッと火が着き灰になった。フィルベルド様が、魔法で燃やしたのだ。
魔法が使えるとは知らなかったけど、騎士には魔法も使える方もいるし、魔法騎士という魔法に特化した騎士もいるから不思議ではない。
「フィ、フィルベルド様――!? 大事な離縁状が!?」
「何が大事だ! 俺には、こんなもの人生に必要ない!!」
「離縁状がないと、離縁出来ないんですよ!?」
何で、前触れもなく燃やすの!?
「クッ……こんなものを大事に持っていたとは!」
フィルベルド様は、灰の残る手で拳を握り締めて、絶対に離縁はしないぞ、という気迫まである。
「仕方ないですね……もう一度書きます」
バッグの中から、書き損じした時のための予備を出すと、フィルベルド様は「寄越しなさい」と言い、彼に真っさらな離縁状を渡した。
「まだ、そちらは書いていませんよ?」
「書く必要はない!!」
そう言って、また一瞬でボッと燃やした。
「……フィルベルド様。何で燃やすんですか!?」
「うるさい! 離縁など絶対にしないぞ! 今すぐに恋人も吐いてもらおう! 止めを刺しに行くぞ!! 邪魔するなら放置できん!! ディアナに振り向いてもらうまで待とうと思っていたが止めだ! 今すぐに首を取りに行くぞ!!」
「怖いことを言わないでくださいよ!!」
「吐く気がないなら、すぐにこちらで調べる! 俺は躊躇する男ではないぞ!」
「恋人なんていませんよ!! 何度も言いますけど、不貞はしません!!」
今すぐに、恋人(勘違い)を止めに刺しに行くつもりなのか殺る気に満ち溢れたフィルベルド様を必死で引き留めた。
「フィルベルド様。落ち着いて下さい。私には、恋人なんかいないんですよ? 誰の首を取りに行くつもりですか……調べても出てきませんよ。無駄なことはおやめください」
フィルベルド様の、腕のシャツを掴んで必死で訴えた。
本当に恋人なんかいないから、彼が誰に何をするのかわからない。
必死な表情で、彼のシャツを掴んだままの私を見て、フィルベルド様は深呼吸をすると静かに話し出した。
「恋人がいないなら、離縁は俺のせいか?」
「……ずっと帰って来なかったから、嫌われているのかと……」
「仕事の内容は言えないが、ディアナを嫌ったりはしない。そんなことは、一度もない。これから先も変わらない。君だけが、唯一の最愛の人だ……どうか離縁は考え直してくれ」
そう言って、シャツを掴んでいた手を優しく取られ、愛おしそうに彼の唇が触れる。
「この6年、ディアナのことだけを想っていた……君だけが、唯一の最愛の人だ……どうか離縁は考え直してくれ」
「では離縁は……?」
「何があろうと絶対にしない」
そんな風に懇願されたら、軽く離縁をしましょうとは言えない。フィルベルド様のことが嫌いだったわけではなかった。今もそれは変わらない。
「ディアナ。やはり、すぐに一緒に住もう。一緒に住んでお互いを知るんだ。これ以上苦労もかけられない」
「……私は、フィルベルド様のことが好きかわからないんですよ? そんな妻よりもフィルベルド様には相応しい方がいます。もうお父様もいないですし、私一人なら生活に困ることもないですし……」
「一人にはさせないし、俺に相応しいのはディアナだけだ」
両手を取ったまま、膝をつき懇願してくるフィルベルド様に、私でいいのだろうか……と心が動かないわけではない。でも、彼に迷惑はかけられない。
両親もすでにいない。結婚を決めたお父様もいないから、結婚にフィルベルド様が縛られる必要はないと思う。
「……私は、もう両親もいません」
「すまない。一人で寂しい思いをさせた」
「元々裕福な子爵令嬢じゃなかったですし……」
「だが、結婚をしてくれた」
「今の私は、ドレスも靴も無くて……貴族らしくありません。とても次期公爵夫人とは思えなくってですね……」
「それは、俺のせいだ。ディアナが悪いところは何一つない」
迷いなくそう言ってくるフィルベルド様は、更に続けて話している。
「ディアナと結婚出来たのは人生で一番の幸運だ。逃したくない」
「本当ですか?」
「本当だ……どうか、側にいて欲しい」
「……すぐには、本当の夫婦になれないかもしれませんよ?」
「ディアナの意思は尊重する。君が受け入れてくれるまで待とう……一緒にいてくれるな」
「はい……」
切なさを込めて懇願してくる。それに、私は戸惑いながらも返事をした。
魔法が使えるとは知らなかったけど、騎士には魔法も使える方もいるし、魔法騎士という魔法に特化した騎士もいるから不思議ではない。
「フィ、フィルベルド様――!? 大事な離縁状が!?」
「何が大事だ! 俺には、こんなもの人生に必要ない!!」
「離縁状がないと、離縁出来ないんですよ!?」
何で、前触れもなく燃やすの!?
「クッ……こんなものを大事に持っていたとは!」
フィルベルド様は、灰の残る手で拳を握り締めて、絶対に離縁はしないぞ、という気迫まである。
「仕方ないですね……もう一度書きます」
バッグの中から、書き損じした時のための予備を出すと、フィルベルド様は「寄越しなさい」と言い、彼に真っさらな離縁状を渡した。
「まだ、そちらは書いていませんよ?」
「書く必要はない!!」
そう言って、また一瞬でボッと燃やした。
「……フィルベルド様。何で燃やすんですか!?」
「うるさい! 離縁など絶対にしないぞ! 今すぐに恋人も吐いてもらおう! 止めを刺しに行くぞ!! 邪魔するなら放置できん!! ディアナに振り向いてもらうまで待とうと思っていたが止めだ! 今すぐに首を取りに行くぞ!!」
「怖いことを言わないでくださいよ!!」
「吐く気がないなら、すぐにこちらで調べる! 俺は躊躇する男ではないぞ!」
「恋人なんていませんよ!! 何度も言いますけど、不貞はしません!!」
今すぐに、恋人(勘違い)を止めに刺しに行くつもりなのか殺る気に満ち溢れたフィルベルド様を必死で引き留めた。
「フィルベルド様。落ち着いて下さい。私には、恋人なんかいないんですよ? 誰の首を取りに行くつもりですか……調べても出てきませんよ。無駄なことはおやめください」
フィルベルド様の、腕のシャツを掴んで必死で訴えた。
本当に恋人なんかいないから、彼が誰に何をするのかわからない。
必死な表情で、彼のシャツを掴んだままの私を見て、フィルベルド様は深呼吸をすると静かに話し出した。
「恋人がいないなら、離縁は俺のせいか?」
「……ずっと帰って来なかったから、嫌われているのかと……」
「仕事の内容は言えないが、ディアナを嫌ったりはしない。そんなことは、一度もない。これから先も変わらない。君だけが、唯一の最愛の人だ……どうか離縁は考え直してくれ」
そう言って、シャツを掴んでいた手を優しく取られ、愛おしそうに彼の唇が触れる。
「この6年、ディアナのことだけを想っていた……君だけが、唯一の最愛の人だ……どうか離縁は考え直してくれ」
「では離縁は……?」
「何があろうと絶対にしない」
そんな風に懇願されたら、軽く離縁をしましょうとは言えない。フィルベルド様のことが嫌いだったわけではなかった。今もそれは変わらない。
「ディアナ。やはり、すぐに一緒に住もう。一緒に住んでお互いを知るんだ。これ以上苦労もかけられない」
「……私は、フィルベルド様のことが好きかわからないんですよ? そんな妻よりもフィルベルド様には相応しい方がいます。もうお父様もいないですし、私一人なら生活に困ることもないですし……」
「一人にはさせないし、俺に相応しいのはディアナだけだ」
両手を取ったまま、膝をつき懇願してくるフィルベルド様に、私でいいのだろうか……と心が動かないわけではない。でも、彼に迷惑はかけられない。
両親もすでにいない。結婚を決めたお父様もいないから、結婚にフィルベルド様が縛られる必要はないと思う。
「……私は、もう両親もいません」
「すまない。一人で寂しい思いをさせた」
「元々裕福な子爵令嬢じゃなかったですし……」
「だが、結婚をしてくれた」
「今の私は、ドレスも靴も無くて……貴族らしくありません。とても次期公爵夫人とは思えなくってですね……」
「それは、俺のせいだ。ディアナが悪いところは何一つない」
迷いなくそう言ってくるフィルベルド様は、更に続けて話している。
「ディアナと結婚出来たのは人生で一番の幸運だ。逃したくない」
「本当ですか?」
「本当だ……どうか、側にいて欲しい」
「……すぐには、本当の夫婦になれないかもしれませんよ?」
「ディアナの意思は尊重する。君が受け入れてくれるまで待とう……一緒にいてくれるな」
「はい……」
切なさを込めて懇願してくる。それに、私は戸惑いながらも返事をした。