白い結婚なので離縁を決意したら、夫との溺愛生活に突入していました。いつから夫の最愛の人になったのかわかりません!

妻と夫の出発

アスラン殿下にお城近くの一等地に邸を頂き、フィルベルド様はあっという間に使用人を揃えた。

殿下の邸だけあって、邸内は豪華絢爛でありながらも、アスラン殿下の趣味が派手好きで無かった為か、落ち着いた内装になっている。



アスラン殿下の邸だったから、管理も怠っておらず邸を一斉に掃除することもなくて、おかげで私たちはすぐに住めることが出来た。



その邸から、フィルベルド様はご機嫌で仕事へと出発する。

背も高くスラリとした彼は騎士の隊服がよく似合う。誰が見てもうっとりする容姿だった。



「ディアナ。一緒に行けなくてすまない……すぐに迎えに行くから」

「そ、そうですか……」



そう言って、名残惜しそうに抱擁してくる。どうやら毎朝抱擁してから出勤したいらしい。

初日は突然のことで「ひぃっ……!」と変な声が出たけど、数日でとりあえず平静は装える様になった自分を褒めたい。



「いってらっしゃいませ」と引きつるのを抑えてお見送りすると、フィルベルド様は眩しい笑顔で出発した。



フィルベルド様が見えなくなり、さて……と後ろを振り向くと、一緒に見送りをした新しい執事と侍女のミリアがいる。



新しい執事は、アクスウィス公爵家にいた副執事を置くことになった。彼は、30歳ほどの眼鏡がよく似合う男性。先日、フィルベルド様とお父様の邸に出かけた時に連れて帰って来たのだ。いずれ執事になるから、私たちの邸の執事としてフィルベルド様が決めたのだろう。



それに、お義父様もお元気そうで良かった。お身体を悪くされていたけど、動けないほどでもなく、私とフィルベルド様を快く迎えてくださった。

数時間の滞在で、晩餐もご一緒に出来て良かったと思う。



そして、執事オスカーの一歩後ろでフィルベルド様を一緒に見送ったもう一人は、私の侍女のミリアだ。

フィルベルド様と泊まったあの宿のホテルメイドだった彼女が、綺麗に髪を結わえてくれたことでフィルベルド様がスカウトして来たのだ。

私がミリアに感謝していたのを、フィルベルド様は察してくれたのだろう。



ミリアは、まさかホテルメイドから侍女にスカウトされるとは思わなかったようで、最初は怪しんでいたが、メイドから侍女になれることは光栄なことだと言って、私の侍女へと決まった。



そのミリアと部屋に戻り、フィルベルド様からの贈り物を見た。

沢山ありすぎて困る。

でも、今日の午後にはフィルベルド様の任命式があるから、私もそれに出席しないといけない。



支度のために鏡の前に座るが、こんな地味な妻があの見目麗しいフィルベルド様の妻でいいのだろうか……と自分の顔を鏡ごしに睨む。



そんな私をよそに、ミリアは今日のための落ち着いたドレスを準備しておりテキパキと支度を始めた。



「ミリアもオスカーたちと一緒に見るんでしょう?」

「はい。ディアナ様のドレスを控え室に置いたら、使用人の皆でフィルベルド様の任命式を見学にします」



見学に来ると行っても、私はフィルベルド様の妻という特別席。ミリアたちは、一般の見学席から拝見することになる。



「今夜のドレスの支度も整っていますので、馬車に運んでおきます」

「ありがとう。ミリア」



夜会用の艶やかなドレスと違い、任命式は落ち着いたフォーマルドレスで整え、派手にならないような宝石を着ける。そして、夜には夜会への出席だ。



「ディアナ様。すごくお綺麗です」

「ドレスとミリアのおかげじゃないかしら……」



ハハッ……と作り笑いをして、ミリアの化粧の腕前を褒める。決して濃い化粧ではないが、色使いが上手なミリアの化粧のおかげで、恥ずかしくない装いになっている。

夜会には、夜会にあった化粧をしてくれるからミリアは腕が良くて感心する。



私の夜会用のドレスを詰めた衣装ケースを両手で持ったミリアと玄関に行くと、すでにオスカーが馬車で待っており、オスカーがミリアの持っていた衣装ケースを受け取ると慣れた様子で馬車に積み込み、私たち三人はお城へと出発した。













< 23 / 73 >

この作品をシェア

pagetop