白い結婚なので離縁を決意したら、夫との溺愛生活に突入していました。いつから夫の最愛の人になったのかわかりません!
夫は妻が可愛いらしい
任命式の夜は、城で夜会が行われる。
その前には、フィルベルド様と任命式に来ていた他の騎士団長や城の役人たちに挨拶に回り、疲れながら控え室へと戻った。
そして、休憩の後は準備していたドレスに着替えて夜会へと行く。
控え室を出ると、フィルベルド様も準備を整え待っていた。
「ディアナと夜会に出られるなんて夢のようだ……」
「すみません……この間は、フィルベルド様と気が付かなくて……」
「無理もない。この6年、俺と会うことは無かったのだから……」
「でも、フィルベルド様は、よく私だとわかりましたね? そんなに変わってないですか? ……あの頃と違って、少しは大人になったと思うんですけど……」
「……あの頃と同じで可愛いよ。その上綺麗になった」
一呼吸おいて、愛おしそうに言った。
「可愛いと思って下さっていたんですか?」
「ずっと思っていた……さぁ、行こう」
フィルベルド様は、うっとりとした表情でそう言うと、腕を軽く出し、その腕に手を伸ばす。
確かにフィルベルド様もあの頃は18歳だから、少し変わったかもしれないけど、14歳の私が20歳になっている方が容姿が変わっていると思う。ましてや、この6年、会ってないのだから、変化はわかるはず。
それとも、面影がわかるほど私の顔を覚えていたのだろうか。
不思議だなぁ……と思いながらも、私たちは夫婦らしくそのまま腕を組んで会場へと行った。
夜会ではダンスから始まり、私とフィルベルド様も一曲踊るが彼は上手だった。
私は、子供の時からイクセルとダンスの練習をしていたし、フィルベルド様と結婚してからも忘れないように、時々は一人で練習していた。
毎日しなくても意外と忘れないもので、その上フィルベルド様が上手くリードしてくれている。おかげで、誰も私がずっとダンスをしていないことに気がつかないだろう。
腰に回された手に、夫との初めてのダンスは不思議な感じがした。
「……よく夜会には出ていらしたんですか?」
「そうだな……アスラン様の護衛も兼ねて夜会に出席することもあったからな……」
ダンスが終わり、シャンパングラスを片手にそう聞いた。
フィルベルド様は、ダンスまでは笑顔を見せていたのに今は眉間にシワが寄っている。
彼の視線の先を見ると、ルトガー様が人の波を軽くかき分けて真っ直ぐにこちらに向かっていた。
「……フィルベルド様。ご用がおありなら、私にかまわず行ってくださいね?」
「……離れたくない」
「でも、ルトガー様がこちらに向かって来ていますよ?」
本心がポロリと出るような言い方をするフィルベルド様に、ルトガー様が伝令を伝えに来たようだった。
「フィルベルド様。アスラン殿下がお呼びです」
「……今日は、無理だろ。ディアナがいるんだぞ」
「しかし……」
困ったように私に視線を落としたルトガー様に、遠慮するべきなのだろう、と察してしまう。
「フィルベルド様。私のことを気にする必要はありませんよ」
「一人にしたくない。やっと一緒にいられるんだ」
「……では、すぐに帰って来てくださいね。私は、それまで友人と一緒にいます」
フィルベルド様が安心して仕事に行けるように、そう言いながらシャンパングラスを取った。
「友人はどこにいるんだ?」
「友人も貴族ですから、きっと会場のどこかにいますよ。少し歩きながら探します」
イクセルならきっとこの夜会に来ているはず。
そう思うが、フィルベルド様はため息まじりに空気が重い。
「心配だ……誰かに声でもかけられたら……」
「誰も私に声なんかかけませんよ……それに、友人といれば大丈夫です」
「誰かが近づいてきたら言いなさい。すぐに片付けよう」
「……ちゃんと待ってますから、怖いことしないでくださいね」
「大丈夫だ。ディアナに怖い思いはさせない」
「はぁ……」
この間みたいに壊れるつもりなのだろうか……恋人がいるのは、私じゃなくてフィルベルド様だと思うけど……。
そして、後ろ髪を引かれるようにフィルベルド様はアスラン殿下の下に行かれた。
夜会にフィルベルド様と一緒じゃないのは、今日が初めてではないし気にすることはない。
……でも、初めての一緒の夜会までアスラン殿下に呼び出されるとは、それほど殿下はフィルベルド様に急用なのだろうか。
任命式の後に、ご挨拶した時は少し顔色が悪くも見えたけど、それも一瞬のことだった。
任命式の時はどうだっただろうか……フィルベルド様を見ていたから、考えてみればよくわからない。あの場では、誰もがフィルベルド様に皆が視線を集めていた。
「……やっぱり、フィルベルド様とは形だけよ」
「こんなところに置いて行かれるなんて、私なら恥ずかしくていられないわ」
フィルベルド様がいなくなり、今日のことを思い出している間に、私はまた笑い者になっていた。
クスクスッ……と嘲笑が聞こえ、それにムッとする気持ちがないわけではないけど、笑い者になるためにこの場所に突っ立ている理由もない。シャンパングラスを返し、私はイクセルを探しに行った。
その前には、フィルベルド様と任命式に来ていた他の騎士団長や城の役人たちに挨拶に回り、疲れながら控え室へと戻った。
そして、休憩の後は準備していたドレスに着替えて夜会へと行く。
控え室を出ると、フィルベルド様も準備を整え待っていた。
「ディアナと夜会に出られるなんて夢のようだ……」
「すみません……この間は、フィルベルド様と気が付かなくて……」
「無理もない。この6年、俺と会うことは無かったのだから……」
「でも、フィルベルド様は、よく私だとわかりましたね? そんなに変わってないですか? ……あの頃と違って、少しは大人になったと思うんですけど……」
「……あの頃と同じで可愛いよ。その上綺麗になった」
一呼吸おいて、愛おしそうに言った。
「可愛いと思って下さっていたんですか?」
「ずっと思っていた……さぁ、行こう」
フィルベルド様は、うっとりとした表情でそう言うと、腕を軽く出し、その腕に手を伸ばす。
確かにフィルベルド様もあの頃は18歳だから、少し変わったかもしれないけど、14歳の私が20歳になっている方が容姿が変わっていると思う。ましてや、この6年、会ってないのだから、変化はわかるはず。
それとも、面影がわかるほど私の顔を覚えていたのだろうか。
不思議だなぁ……と思いながらも、私たちは夫婦らしくそのまま腕を組んで会場へと行った。
夜会ではダンスから始まり、私とフィルベルド様も一曲踊るが彼は上手だった。
私は、子供の時からイクセルとダンスの練習をしていたし、フィルベルド様と結婚してからも忘れないように、時々は一人で練習していた。
毎日しなくても意外と忘れないもので、その上フィルベルド様が上手くリードしてくれている。おかげで、誰も私がずっとダンスをしていないことに気がつかないだろう。
腰に回された手に、夫との初めてのダンスは不思議な感じがした。
「……よく夜会には出ていらしたんですか?」
「そうだな……アスラン様の護衛も兼ねて夜会に出席することもあったからな……」
ダンスが終わり、シャンパングラスを片手にそう聞いた。
フィルベルド様は、ダンスまでは笑顔を見せていたのに今は眉間にシワが寄っている。
彼の視線の先を見ると、ルトガー様が人の波を軽くかき分けて真っ直ぐにこちらに向かっていた。
「……フィルベルド様。ご用がおありなら、私にかまわず行ってくださいね?」
「……離れたくない」
「でも、ルトガー様がこちらに向かって来ていますよ?」
本心がポロリと出るような言い方をするフィルベルド様に、ルトガー様が伝令を伝えに来たようだった。
「フィルベルド様。アスラン殿下がお呼びです」
「……今日は、無理だろ。ディアナがいるんだぞ」
「しかし……」
困ったように私に視線を落としたルトガー様に、遠慮するべきなのだろう、と察してしまう。
「フィルベルド様。私のことを気にする必要はありませんよ」
「一人にしたくない。やっと一緒にいられるんだ」
「……では、すぐに帰って来てくださいね。私は、それまで友人と一緒にいます」
フィルベルド様が安心して仕事に行けるように、そう言いながらシャンパングラスを取った。
「友人はどこにいるんだ?」
「友人も貴族ですから、きっと会場のどこかにいますよ。少し歩きながら探します」
イクセルならきっとこの夜会に来ているはず。
そう思うが、フィルベルド様はため息まじりに空気が重い。
「心配だ……誰かに声でもかけられたら……」
「誰も私に声なんかかけませんよ……それに、友人といれば大丈夫です」
「誰かが近づいてきたら言いなさい。すぐに片付けよう」
「……ちゃんと待ってますから、怖いことしないでくださいね」
「大丈夫だ。ディアナに怖い思いはさせない」
「はぁ……」
この間みたいに壊れるつもりなのだろうか……恋人がいるのは、私じゃなくてフィルベルド様だと思うけど……。
そして、後ろ髪を引かれるようにフィルベルド様はアスラン殿下の下に行かれた。
夜会にフィルベルド様と一緒じゃないのは、今日が初めてではないし気にすることはない。
……でも、初めての一緒の夜会までアスラン殿下に呼び出されるとは、それほど殿下はフィルベルド様に急用なのだろうか。
任命式の後に、ご挨拶した時は少し顔色が悪くも見えたけど、それも一瞬のことだった。
任命式の時はどうだっただろうか……フィルベルド様を見ていたから、考えてみればよくわからない。あの場では、誰もがフィルベルド様に皆が視線を集めていた。
「……やっぱり、フィルベルド様とは形だけよ」
「こんなところに置いて行かれるなんて、私なら恥ずかしくていられないわ」
フィルベルド様がいなくなり、今日のことを思い出している間に、私はまた笑い者になっていた。
クスクスッ……と嘲笑が聞こえ、それにムッとする気持ちがないわけではないけど、笑い者になるためにこの場所に突っ立ている理由もない。シャンパングラスを返し、私はイクセルを探しに行った。