白い結婚なので離縁を決意したら、夫との溺愛生活に突入していました。いつから夫の最愛の人になったのかわかりません!
夫の探し物
あの日____。
第二騎士団長としての任命式は形だけのようなものだった。
隣国ゼノンリード王国で騎士団長になったために、通常行われる任命式が行われなかったためだ。
そして、アスラン殿下の病弱や公務放棄など良からぬ噂を消すためのものであった。
その任命式前にアスラン殿下の部屋から戻って来たルトガーが、アルレット公爵令嬢がやって来たと報告に来た。
「フィルベルド様……また、アルレット公爵令嬢様が来ています」
「こんな日だぞ。断れないのか? もうすぐでディアナも来るから迎えに行きたいんだ」
「アスラン殿下がお相手しようとしてますが、任命式で倒れられては困るかと……夜会にも出席しなければなりませんので……申し訳ありませんが我々がアスラン殿下を止めました」
早くディアナを迎えに行きたくて、会いに行くつもりはなかった。だが、アスラン殿下に倒られては本末転倒だ。そうなれば、任命式に元気なアスラン殿下の姿を見せることが出来なくなる。
……仕方ない、と思うとため息が出ていた。
「……すぐに出る。ディアナの迎えには、間に合うように帰って来るぞ」
「アスラン殿下は、アルレット公爵令嬢には『夜会まで待っていなさい』と言えば良いと言っていました」
アルレット・エイマール公爵令嬢は、アスラン殿下の婚約者の第一候補だ。
クリーム色の柔らかな髪に淑やかな女性のはずだったが……アルレット令嬢は、待たされたせいか最近は特にアスラン殿下に会いに来るようになっている。
その様子に殿下も思うところがあるのだろうが、今はアスラン殿下の現状を知られないようにしなければならなかった。
アスラン殿下は、国のことを考えて結婚をしなければならなかったが、隣国ゼノンリード王国に行っていたために、結婚どころか婚約者選びも延期されていた。
延期することがなければ、アルレット公爵令嬢と結婚していたかもしれない。
だが、今は結婚どころか婚約者を選ぶことなどしている暇はなかった。
そして、あの夜会を最後にアルレット嬢は婚約の延期を言い渡され、それは婚約者候補の解消となるものだった。
それなのに、アルレット嬢は俺に相談に来た。
確かに誰にでも相談できる内容ではないが、せっかくのディアナとの貴重な時間を割くことになった。
相談を受けていた居間では、涙を浮かべるアルレット嬢からアスラン殿下を説得して欲しいというものだった。
だが、アスラン殿下が婚約のことに構っていられないと同時に、俺に苦労をかけたと言って、せめてアルレット嬢のことは何とかしよう……と言い俺を気遣ってくれたのも婚約延期の理由の一つだった。
俺がアスラン殿下の変わりに、女性の相手をする機会を減らしてくれたことだったのに……あろうことか、その俺に相談に来るとは。
相談に来たあの日、アルレット嬢には、アスラン殿下のお心は変わらないと伝えお帰り願った。
それなのに……。
そのせいで、ディアナにあらぬ疑いをかけられている。
お礼をしたいがために、愛人部屋を作るなんて予想外にもほどがある。
アスラン殿下の問題を一刻も早く解決しないと、ディアナとの穏やかな生活が来ない気がしてきた。
「ルトガー……遺物はまだ見つからないのか?」
「ゼノンリード王国にあったと噂されていたのは、もう百年も前ですよ。形も分からず、現在の所在も全く不明です。現在は、噂すらありませんからね……」
「早く見つけないと、アスラン殿下だけではなくディアナも心配だ。彼女は何をするかわからない」
昨夜のことを思い出すと執務机に座ったまま、「クッ……」とペンを持ちサインをしていた手に力が入る。
ルトガーは笑いをこらえている。
「まさか、フィルベルド様に愛人部屋を準備するとは……離縁状を準備したりと、やはり奥様は面白いですね」
「笑い事ではない! 香まで焚いてたんだぞ! あの短い時間であそこまで準備するなんて……! 一瞬で沸き上がった期待が一瞬で消えたんだぞ!」
「それでお礼にデートを取り付けたんですか?」
「バラの礼をしたいと言っていたから……ディアナに、お礼を考えさせていたら恐ろしいことになる」
礼なんて本当はいらない。ディアナが笑って側にいてくれるだけでいいのに……そう思うが、こちらが決めないと、また愛人部屋でも作られたらたまらない。
「国の鑑定能力を持っている魔法使いたちにも、目ぼしい者はいないのか?」
「調べてはいますが……やはり、それらしい能力を持った人間はいませんね」
「資料にあったリンディス伯爵家の鑑定師はどうだ? あそこの商会は、証明書もまがい物を掴んでないから、優れた鑑定師を抱えているんじゃないのか?」
「下調べはしてますけど……登録している鑑定師には、国お抱えの鑑定師よりも優れているとは思えませんね」
大体、商会では魔法で偽物の証明書を掴まされないために、鑑定師と呼ばれる魔法使いがが鑑定の魔法で偽物がどうかを確認する。
優れた鑑定師なら、普通の人間には見えない魔力の流れすらわかる。
その能力がどうしても必要だった。だが、並の能力ではダメだ。
アスラン殿下には、魔法で隠したものすら見えると言われている『真実の瞳』と呼ばれる遺物がどうしても必要なのだ。
第二騎士団長としての任命式は形だけのようなものだった。
隣国ゼノンリード王国で騎士団長になったために、通常行われる任命式が行われなかったためだ。
そして、アスラン殿下の病弱や公務放棄など良からぬ噂を消すためのものであった。
その任命式前にアスラン殿下の部屋から戻って来たルトガーが、アルレット公爵令嬢がやって来たと報告に来た。
「フィルベルド様……また、アルレット公爵令嬢様が来ています」
「こんな日だぞ。断れないのか? もうすぐでディアナも来るから迎えに行きたいんだ」
「アスラン殿下がお相手しようとしてますが、任命式で倒れられては困るかと……夜会にも出席しなければなりませんので……申し訳ありませんが我々がアスラン殿下を止めました」
早くディアナを迎えに行きたくて、会いに行くつもりはなかった。だが、アスラン殿下に倒られては本末転倒だ。そうなれば、任命式に元気なアスラン殿下の姿を見せることが出来なくなる。
……仕方ない、と思うとため息が出ていた。
「……すぐに出る。ディアナの迎えには、間に合うように帰って来るぞ」
「アスラン殿下は、アルレット公爵令嬢には『夜会まで待っていなさい』と言えば良いと言っていました」
アルレット・エイマール公爵令嬢は、アスラン殿下の婚約者の第一候補だ。
クリーム色の柔らかな髪に淑やかな女性のはずだったが……アルレット令嬢は、待たされたせいか最近は特にアスラン殿下に会いに来るようになっている。
その様子に殿下も思うところがあるのだろうが、今はアスラン殿下の現状を知られないようにしなければならなかった。
アスラン殿下は、国のことを考えて結婚をしなければならなかったが、隣国ゼノンリード王国に行っていたために、結婚どころか婚約者選びも延期されていた。
延期することがなければ、アルレット公爵令嬢と結婚していたかもしれない。
だが、今は結婚どころか婚約者を選ぶことなどしている暇はなかった。
そして、あの夜会を最後にアルレット嬢は婚約の延期を言い渡され、それは婚約者候補の解消となるものだった。
それなのに、アルレット嬢は俺に相談に来た。
確かに誰にでも相談できる内容ではないが、せっかくのディアナとの貴重な時間を割くことになった。
相談を受けていた居間では、涙を浮かべるアルレット嬢からアスラン殿下を説得して欲しいというものだった。
だが、アスラン殿下が婚約のことに構っていられないと同時に、俺に苦労をかけたと言って、せめてアルレット嬢のことは何とかしよう……と言い俺を気遣ってくれたのも婚約延期の理由の一つだった。
俺がアスラン殿下の変わりに、女性の相手をする機会を減らしてくれたことだったのに……あろうことか、その俺に相談に来るとは。
相談に来たあの日、アルレット嬢には、アスラン殿下のお心は変わらないと伝えお帰り願った。
それなのに……。
そのせいで、ディアナにあらぬ疑いをかけられている。
お礼をしたいがために、愛人部屋を作るなんて予想外にもほどがある。
アスラン殿下の問題を一刻も早く解決しないと、ディアナとの穏やかな生活が来ない気がしてきた。
「ルトガー……遺物はまだ見つからないのか?」
「ゼノンリード王国にあったと噂されていたのは、もう百年も前ですよ。形も分からず、現在の所在も全く不明です。現在は、噂すらありませんからね……」
「早く見つけないと、アスラン殿下だけではなくディアナも心配だ。彼女は何をするかわからない」
昨夜のことを思い出すと執務机に座ったまま、「クッ……」とペンを持ちサインをしていた手に力が入る。
ルトガーは笑いをこらえている。
「まさか、フィルベルド様に愛人部屋を準備するとは……離縁状を準備したりと、やはり奥様は面白いですね」
「笑い事ではない! 香まで焚いてたんだぞ! あの短い時間であそこまで準備するなんて……! 一瞬で沸き上がった期待が一瞬で消えたんだぞ!」
「それでお礼にデートを取り付けたんですか?」
「バラの礼をしたいと言っていたから……ディアナに、お礼を考えさせていたら恐ろしいことになる」
礼なんて本当はいらない。ディアナが笑って側にいてくれるだけでいいのに……そう思うが、こちらが決めないと、また愛人部屋でも作られたらたまらない。
「国の鑑定能力を持っている魔法使いたちにも、目ぼしい者はいないのか?」
「調べてはいますが……やはり、それらしい能力を持った人間はいませんね」
「資料にあったリンディス伯爵家の鑑定師はどうだ? あそこの商会は、証明書もまがい物を掴んでないから、優れた鑑定師を抱えているんじゃないのか?」
「下調べはしてますけど……登録している鑑定師には、国お抱えの鑑定師よりも優れているとは思えませんね」
大体、商会では魔法で偽物の証明書を掴まされないために、鑑定師と呼ばれる魔法使いがが鑑定の魔法で偽物がどうかを確認する。
優れた鑑定師なら、普通の人間には見えない魔力の流れすらわかる。
その能力がどうしても必要だった。だが、並の能力ではダメだ。
アスラン殿下には、魔法で隠したものすら見えると言われている『真実の瞳』と呼ばれる遺物がどうしても必要なのだ。