白い結婚なので離縁を決意したら、夫との溺愛生活に突入していました。いつから夫の最愛の人になったのかわかりません!
妻の不思議
リンディス伯爵家の一室で友人のイクセルが、私の座っている机の上に広げられた証明書を一枚一枚確認している。
それは、私が見たものを確認しているのだ。
「……これは、偽物ね。魔法の印鑑が打たれてないわ」
「この印鑑は違うのか?」
「印鑑があるの? でも、私には見えないわ」
イクセルは、証明書の印鑑を再度確認しながら私が見分けた偽物と本物の証明書を仕分けている。そして、相変わらず不思議だと頷く。
私は、昔から不思議と人に見えないものが見えていた。
亡くなったお母様は、隣国ゼノンリード王国から嫁いで来た方。その、お母様の実家だった男爵家は跡取りがいなくて今は、遠い親戚が継いでるらしいけど、もう私とは血のつながりすら無いと言っていいほど他人だ。
お母様の一族には魔法使いもいたらしいけど、お母様は魔法使いじゃなかったと思う。
でも、私が幼い頃に人には見えないものが見えていたのは、その片燐なのだろうと思っていた。でも、魔法が使えないのに魔力の流れが見えるのは有り得ないことだった。
その上、見えないものを見えることに周りの人たちは不気味がっていた。だから、秘密にして、幼い子供特有のものだとした。
お父様もそう思っていたと思う。フィルベルド様に渡した報告書にも書かれてはいないと思いたい。知られたら、きっとフィルベルド様も私を不気味な令嬢だと思うだろう。
フィルベルド様にそう思われるのは、嫌だという気持ちがあり隠したままだった。
「これで終わりだ。いつも助かるよ。魔法をかけられていても、魔力の流れが薄いモノは、鑑定師でも見えにくいらしいからな」
「こっちこそ仕事をもらって助かっているわ。でも、いつも通り私のことは秘密でお願いね」
「わかってる。鑑定師でもないのに、鑑定師以上の能力があるなんて珍しがられるだけだ」
小さな頃に、不気味な娘と言われ友達もいなかった私と一緒に遊んでくれたのは、幼馴染のイクセル一人。彼は、私の不思議も色眼鏡で見ない。
仕事に協力しているのも、仕送りがなかったと思っていた私からお願いしたものだった。
そして、誰にも知られないようにこうして、証明書の鑑定や薬草の魔素を調べたりしている。
「借家もありがとう。でも、明日にはオスカーたちが荷物を運んでくれるからすぐに返すわね」
「良い方でよかったな。音沙汰もないから、酷い男だと思っていたけど」
「あれは、誤解だったのよ。時々、ちょっとおかしい方だけど、すごく優しいわ」
前向きにフィルベルド様と暮らそうと思い、借家を引き払う事に決めたからイクセルにその報告に来ていた。
イクセルは、フィルベルド様がいなかったこの6年に随分と助けられている。
アクスウィス夫人が仕事をしているとバレないようにと仕事を回してくれて、その給金もイクセルからもらっていた。
晩餐に呼んでくれるだけではなく、食事や食材を持って来てくれることもあったのだ。
今日も、報告に来たついでにイクセルに頼まれた仕事もしていた。
そして、イクセルが「お疲れ」と言って温かいお茶を淹れてくれる。それを2人で向かい合って飲んでいた。
「それにしても、スウェル子爵家が着服していたとは……」
「羽振りが良かったのは、そのせいもあったのね」
「てっきり、クレイグ殿下がこずかいでも渡しているからかと思っていたんだ……気付かなくて悪かったな」
「こずかい……? クレイグ殿下がナティに?」
「……あまり、大きな声では言えないが、ナティがクレイグ殿下の寵を受けていると噂はあった。証拠がないから憶測だけど……それなら、ナティがいつも新しいドレスなのも、そのせいだと思って違和感がなかったし……」
ナティが、クレイグ殿下から寵を得ているとは思えない。
あのクレイグ殿下は、つかみどころがない感じだった。
殿下だから寵を欲しがる女性はいるだろうし、クレイグ殿下も女性の扱いになれている様子だから手が早いのだろうか。
でも、とてもじゃないけど女性に本気になる方には見えなかったのだ。
それは、私が見たものを確認しているのだ。
「……これは、偽物ね。魔法の印鑑が打たれてないわ」
「この印鑑は違うのか?」
「印鑑があるの? でも、私には見えないわ」
イクセルは、証明書の印鑑を再度確認しながら私が見分けた偽物と本物の証明書を仕分けている。そして、相変わらず不思議だと頷く。
私は、昔から不思議と人に見えないものが見えていた。
亡くなったお母様は、隣国ゼノンリード王国から嫁いで来た方。その、お母様の実家だった男爵家は跡取りがいなくて今は、遠い親戚が継いでるらしいけど、もう私とは血のつながりすら無いと言っていいほど他人だ。
お母様の一族には魔法使いもいたらしいけど、お母様は魔法使いじゃなかったと思う。
でも、私が幼い頃に人には見えないものが見えていたのは、その片燐なのだろうと思っていた。でも、魔法が使えないのに魔力の流れが見えるのは有り得ないことだった。
その上、見えないものを見えることに周りの人たちは不気味がっていた。だから、秘密にして、幼い子供特有のものだとした。
お父様もそう思っていたと思う。フィルベルド様に渡した報告書にも書かれてはいないと思いたい。知られたら、きっとフィルベルド様も私を不気味な令嬢だと思うだろう。
フィルベルド様にそう思われるのは、嫌だという気持ちがあり隠したままだった。
「これで終わりだ。いつも助かるよ。魔法をかけられていても、魔力の流れが薄いモノは、鑑定師でも見えにくいらしいからな」
「こっちこそ仕事をもらって助かっているわ。でも、いつも通り私のことは秘密でお願いね」
「わかってる。鑑定師でもないのに、鑑定師以上の能力があるなんて珍しがられるだけだ」
小さな頃に、不気味な娘と言われ友達もいなかった私と一緒に遊んでくれたのは、幼馴染のイクセル一人。彼は、私の不思議も色眼鏡で見ない。
仕事に協力しているのも、仕送りがなかったと思っていた私からお願いしたものだった。
そして、誰にも知られないようにこうして、証明書の鑑定や薬草の魔素を調べたりしている。
「借家もありがとう。でも、明日にはオスカーたちが荷物を運んでくれるからすぐに返すわね」
「良い方でよかったな。音沙汰もないから、酷い男だと思っていたけど」
「あれは、誤解だったのよ。時々、ちょっとおかしい方だけど、すごく優しいわ」
前向きにフィルベルド様と暮らそうと思い、借家を引き払う事に決めたからイクセルにその報告に来ていた。
イクセルは、フィルベルド様がいなかったこの6年に随分と助けられている。
アクスウィス夫人が仕事をしているとバレないようにと仕事を回してくれて、その給金もイクセルからもらっていた。
晩餐に呼んでくれるだけではなく、食事や食材を持って来てくれることもあったのだ。
今日も、報告に来たついでにイクセルに頼まれた仕事もしていた。
そして、イクセルが「お疲れ」と言って温かいお茶を淹れてくれる。それを2人で向かい合って飲んでいた。
「それにしても、スウェル子爵家が着服していたとは……」
「羽振りが良かったのは、そのせいもあったのね」
「てっきり、クレイグ殿下がこずかいでも渡しているからかと思っていたんだ……気付かなくて悪かったな」
「こずかい……? クレイグ殿下がナティに?」
「……あまり、大きな声では言えないが、ナティがクレイグ殿下の寵を受けていると噂はあった。証拠がないから憶測だけど……それなら、ナティがいつも新しいドレスなのも、そのせいだと思って違和感がなかったし……」
ナティが、クレイグ殿下から寵を得ているとは思えない。
あのクレイグ殿下は、つかみどころがない感じだった。
殿下だから寵を欲しがる女性はいるだろうし、クレイグ殿下も女性の扱いになれている様子だから手が早いのだろうか。
でも、とてもじゃないけど女性に本気になる方には見えなかったのだ。