白い結婚なので離縁を決意したら、夫との溺愛生活に突入していました。いつから夫の最愛の人になったのかわかりません!
妻は夫を待っていた
真っ暗な部屋に取り残されて寒気がする。
今夜は月も隠れており、月明かりも期待できない。
どうせ朝になれば、日は射すんだからこのまま寝てれば暗闇なんか関係ない。
そう思うけど、ずっとここにいるのは良くない気がする。
暗闇の中、手探りで鎖をたどると鎖の根元はベッドの足から伸びており、何とか外そうとするも鍵穴すら無くて外せない。
自分の足の足枷を外そうと、ガチャガチャとするもこっちも外せられる気配もない。
ここは後宮。クレイグ殿下に手を出されたって、誰も止めてくれる人なんかいない。
それに、一度でもクレイグ殿下と同衾なんかでもすれば、今日は来られなくてもフィルベルド様は本当に来てくれない。
暗闇の部屋。暖炉の火も消していき、冷たい部屋で寒気がすると恐怖を煽られている。
怖い……。
その時にカタンと微かな音がした。その音にビクッとする。
こんな深夜にまたクレイグ殿下が来るとは、まさか、ここで一緒に寝る気じゃないでしょうね……。
そう思うと、身を守ろうと短くされた鎖を握りしめ、物音一つしない静かな部屋で気を張り詰めていた。
不気味な気配に、身体が小刻みに震えている。
____コンコン。
音を調べるかのような小さなノック音がした。
「だ、誰ですか?」
怯えながら、そう言った。
クレイグ殿下なら、ノックをしても、出入り自由だから勝手に入ってくるはず。
それなのに、ノックをしても入って来ないのはクレイグ殿下ではない。
誰がこの後宮にいるのかわからないし、使用人がこんな深夜に来るとも思えず、只々不気味で恐怖があった。
そして、ノックの主は私の名前を呼んだ。
「……ディアナ?」
思わず、息が止まる。フィルベルド様の声だ。
「……フィルベルド様?」
確認するかのように、そう名前を呼んだ。
「ディアナ! ここにいるのか!?」
フィルベルド様は落ち着きのない声で、扉を乱暴に叩き始めた。
アスラン殿下は、どうしたのだろうか。ここに来て大丈夫なのだろうか。
私を迎えに来てくれたのだろうか。
「ディアナ。大丈夫か? 部屋を開けられるか? 扉はどこだ? ディアナ?」
フィルベルド様の扉を破ろうとする音の響く中で、彼の声に張り詰めていたものが切れそうだった。
そして、目尻から涙が一粒零れた。
「……フィルベルド様。助けて……」
張り詰めていた糸が切れ、その場から動けず立ち上がることも出来なかった。
できたのは、ただ力なくその一言を発するだけ。
すると、扉の音が止まる。
「ディアナ……少しだけ離れてくれるか?」
「フィルベルド様……?」
「ベッドの下か……どこかに隠れてくれ」
「はい……」
そう返事をして、手探りでベッドの下に潜り込んだ。
私がベッドの下に潜り込む時間を考えたのか、少しだけ経つと扉の周りの壁ごと崩れる音がした。
ベッドの下からでも、廊下の灯りが伸びてきた。フィルベルド様が扉を壊したのだ。
「ディアナ」
私の名前を呼びながら入って来た。ベッドの下から出ようと這いつくばりながら頭が出たところで、身体が引っ張り上げられた。
「ディアナ、やっと見つけた……」
「フィルベルド様っ……」
胸が熱くなる。フィルベルド様に力いっぱい抱き上げられて、それにしがみつくように彼に抱きついた。
「遅くなって悪かった……怖かっただろう……」
「この後宮が怖くて……真っ暗で……来てくださらないかと……」
涙を流しながら、たどたどしく言うと、フィルベルド様の手に力がいっそうはいる。
「何かあれば必ず助けると約束しただろう……」
「はい……」
フィルベルド様が来てくれた。それに胸がいっぱいになり、しがみついたままそう頷いた。
今夜は月も隠れており、月明かりも期待できない。
どうせ朝になれば、日は射すんだからこのまま寝てれば暗闇なんか関係ない。
そう思うけど、ずっとここにいるのは良くない気がする。
暗闇の中、手探りで鎖をたどると鎖の根元はベッドの足から伸びており、何とか外そうとするも鍵穴すら無くて外せない。
自分の足の足枷を外そうと、ガチャガチャとするもこっちも外せられる気配もない。
ここは後宮。クレイグ殿下に手を出されたって、誰も止めてくれる人なんかいない。
それに、一度でもクレイグ殿下と同衾なんかでもすれば、今日は来られなくてもフィルベルド様は本当に来てくれない。
暗闇の部屋。暖炉の火も消していき、冷たい部屋で寒気がすると恐怖を煽られている。
怖い……。
その時にカタンと微かな音がした。その音にビクッとする。
こんな深夜にまたクレイグ殿下が来るとは、まさか、ここで一緒に寝る気じゃないでしょうね……。
そう思うと、身を守ろうと短くされた鎖を握りしめ、物音一つしない静かな部屋で気を張り詰めていた。
不気味な気配に、身体が小刻みに震えている。
____コンコン。
音を調べるかのような小さなノック音がした。
「だ、誰ですか?」
怯えながら、そう言った。
クレイグ殿下なら、ノックをしても、出入り自由だから勝手に入ってくるはず。
それなのに、ノックをしても入って来ないのはクレイグ殿下ではない。
誰がこの後宮にいるのかわからないし、使用人がこんな深夜に来るとも思えず、只々不気味で恐怖があった。
そして、ノックの主は私の名前を呼んだ。
「……ディアナ?」
思わず、息が止まる。フィルベルド様の声だ。
「……フィルベルド様?」
確認するかのように、そう名前を呼んだ。
「ディアナ! ここにいるのか!?」
フィルベルド様は落ち着きのない声で、扉を乱暴に叩き始めた。
アスラン殿下は、どうしたのだろうか。ここに来て大丈夫なのだろうか。
私を迎えに来てくれたのだろうか。
「ディアナ。大丈夫か? 部屋を開けられるか? 扉はどこだ? ディアナ?」
フィルベルド様の扉を破ろうとする音の響く中で、彼の声に張り詰めていたものが切れそうだった。
そして、目尻から涙が一粒零れた。
「……フィルベルド様。助けて……」
張り詰めていた糸が切れ、その場から動けず立ち上がることも出来なかった。
できたのは、ただ力なくその一言を発するだけ。
すると、扉の音が止まる。
「ディアナ……少しだけ離れてくれるか?」
「フィルベルド様……?」
「ベッドの下か……どこかに隠れてくれ」
「はい……」
そう返事をして、手探りでベッドの下に潜り込んだ。
私がベッドの下に潜り込む時間を考えたのか、少しだけ経つと扉の周りの壁ごと崩れる音がした。
ベッドの下からでも、廊下の灯りが伸びてきた。フィルベルド様が扉を壊したのだ。
「ディアナ」
私の名前を呼びながら入って来た。ベッドの下から出ようと這いつくばりながら頭が出たところで、身体が引っ張り上げられた。
「ディアナ、やっと見つけた……」
「フィルベルド様っ……」
胸が熱くなる。フィルベルド様に力いっぱい抱き上げられて、それにしがみつくように彼に抱きついた。
「遅くなって悪かった……怖かっただろう……」
「この後宮が怖くて……真っ暗で……来てくださらないかと……」
涙を流しながら、たどたどしく言うと、フィルベルド様の手に力がいっそうはいる。
「何かあれば必ず助けると約束しただろう……」
「はい……」
フィルベルド様が来てくれた。それに胸がいっぱいになり、しがみついたままそう頷いた。