白い結婚なので離縁を決意したら、夫との溺愛生活に突入していました。いつから夫の最愛の人になったのかわかりません!
夫は塔にやって来る
窓辺に座っているクレイグ殿下の近くに椅子を移動させて座った。
彼は、幽閉されているのに、いつもと変わらない態度で嘆いていることもない。
「クレイグ殿下。予言を聞きました……アスラン殿下を恨んでいるんですか?」
「……別に恨んでないよ。アスランは何もしてないからね……ただ、私と違って才能があっただけだよ」
「じゃあ、もうアスラン殿下に呪いをかけないでくださいね……」
「もうかける理由がないから、しないよ……」
「王妃様も心配してました……私も心配してます」
「そう……私は、母上に似たのだろうね。母上は隣国ゼノンリード王国の出身だから……」
このヴェレス王国は騎士の国と言われるぐらい騎士団が有名な国だ。
そして、隣国ゼノンリード王国は、どちらかと言えば魔法使いが多い。クレイグ殿下が、魔法に秀でたのもその血筋のせいかもしれない。
「……私は、おそらくこの国を出されるだろうね。陛下がアスランの側に私を置くはずがないからね……ディアナは? 私と一緒に行く?」
「だから行きませんよ。私が一緒に行ってどうするんですか? それに、アスラン殿下はクレイグ殿下を見捨てませんよ」
「まぁ、どっちでもいいけどね……」
クレイグ殿下はまるで空っぽに見えた。することが無くなったからだろうと思うけど、呪いに精を出してとは言えないし、私に出来ることはない気がしてきた。
何か楽しい共通の話題でもないかと考えている私をよそに、クレイグ殿下は窓の外に釘付けになっている。
「……ディアナ、また来る?」
窓の外を見ていたクレイグ殿下が急にそう言ってきた。
「お暇みたいですし、話相手ぐらいならかまいませんよ」
「幽閉されているから、暇なのは間違いないね。……もう一つ菓子をくれないかい?」
「かまいませんけど……その笑顔はなんですか?」
「別に」
相変わらず、つかみどころがない。正直に言えば、何を考えているのかわからない。
でも、寂しいのだとは感じる。
「どうぞ」ともう一度菓子袋を差し出し近づくと、前触れもなく扉が勢いよく開いた。
扉が壊れるのかと思うほどの音にびくりとして、身体が固まる。
「何をしているんだ!?」
恐ろしい形相で入って来たのはフィルベルド様だった。
菓子袋を目の前で差し出しているクレイグ殿下をちらりと見るとニコリとしている。
この様子に、窓辺からフィルベルド様が見えていたんじゃないかと思う。
「……フィルベルド様が来ることを知ってましたね?」
「思ったよりも早かったね……それにしても息も乱れてないよ。さすがフィルベルドだねぇ」
フィルベルド様をからかう様子に、楽しいものを見つけたように笑うクレイグ殿下に「やめてください」と懇願したくなる。そう言う隙も無いほどあっという間に私を引き寄せてクレイグ殿下から庇って来ると一言思う。
あぁ、あれがやって来た……と。
「ディアナ。大丈夫か!? なにもされてないか!?」
「大丈夫です。落ち着いてください。落ち着いてくださいね」
フィルベルド様の腕の中でそう言うが、落ち着くことはない。
「何故あんなに近くにいたんだ?」
「お菓子をお渡ししていただけですからね。問題ありません」
「菓子? クレイグ殿下に菓子を作って来ていたのか? 王妃様に頼まれて来たんじゃないのか? 俺に秘密で会う気だったのか?」
「フィルベルド様の分はルトガー様にお渡ししてますよ? ルトガー様に聞いてこちらに来たんじゃないのですか?」
「聞いたのは王妃様だ。城で会ってディアナに頼み事をしたと聞いて急いで来たんだ」
どうやら、王妃様が城でフィルベルド様に、私のことでお礼を言ったらしい。
「慈悲のある奥方で感謝します」と涙ながらにフィルベルド様に伝えたが、フィルベルド様はきっともうそれどころではなかっただろう。
「フィルベルド。ディアナの菓子は美味しかったよ」
「そうですか。思ったよりも元気そうで安心しました。ディアナは連れて帰りますよ」
「別にいいよ。話なんかないしね……でも、次はもっと甘い菓子にしてくれるかい?」
「かまいませんけど……」
「また来る気か!?」
「ダメですか? でも、王妃様の許可もありますからこの塔の出入りは自由になったんですよ」
「なら、俺も来るぞ!! 絶対に二人にはさせない!!」
「フィルベルドは騒がしいから来なくていいよ」
「クレイグ殿下に拒否権はありませんよ!」
ツンとそっぽを向いたクレイグ殿下にフィルベルド様は冷たくそう言い放った。
迫力がありすぎてちょっと怖い。
そのまま、クレイグ殿下に挨拶をして塔をあとにするとフィルベルド様は、無言のままで私と歩いていた。
「あの……人に言えないようなことはありませんから、フィルベルド様が心配することないですよ? クレイグ殿下は、ただ寂しいだけですよ」
「クレイグ殿下がどうかは知らないが……ディアナが浮気をするとは思ってない」
「本当ですか?」
「ただ……二人でいて欲しくない。ディアナを誰かに取られそうで不安になる」
それは、まだ本当の夫婦になってないからだろう。私がフィルベルド様を受け入れてないからだ。
握られている手に、フィルベルド様の力が入っているのがわかる。
「誰かに取られても奪い返しに行くが……ディアナだけは誰にも渡したくない」
「……では、本当の夫婦になりましょう」
そう言うと、お互いの足が止まっていた。
彼は、幽閉されているのに、いつもと変わらない態度で嘆いていることもない。
「クレイグ殿下。予言を聞きました……アスラン殿下を恨んでいるんですか?」
「……別に恨んでないよ。アスランは何もしてないからね……ただ、私と違って才能があっただけだよ」
「じゃあ、もうアスラン殿下に呪いをかけないでくださいね……」
「もうかける理由がないから、しないよ……」
「王妃様も心配してました……私も心配してます」
「そう……私は、母上に似たのだろうね。母上は隣国ゼノンリード王国の出身だから……」
このヴェレス王国は騎士の国と言われるぐらい騎士団が有名な国だ。
そして、隣国ゼノンリード王国は、どちらかと言えば魔法使いが多い。クレイグ殿下が、魔法に秀でたのもその血筋のせいかもしれない。
「……私は、おそらくこの国を出されるだろうね。陛下がアスランの側に私を置くはずがないからね……ディアナは? 私と一緒に行く?」
「だから行きませんよ。私が一緒に行ってどうするんですか? それに、アスラン殿下はクレイグ殿下を見捨てませんよ」
「まぁ、どっちでもいいけどね……」
クレイグ殿下はまるで空っぽに見えた。することが無くなったからだろうと思うけど、呪いに精を出してとは言えないし、私に出来ることはない気がしてきた。
何か楽しい共通の話題でもないかと考えている私をよそに、クレイグ殿下は窓の外に釘付けになっている。
「……ディアナ、また来る?」
窓の外を見ていたクレイグ殿下が急にそう言ってきた。
「お暇みたいですし、話相手ぐらいならかまいませんよ」
「幽閉されているから、暇なのは間違いないね。……もう一つ菓子をくれないかい?」
「かまいませんけど……その笑顔はなんですか?」
「別に」
相変わらず、つかみどころがない。正直に言えば、何を考えているのかわからない。
でも、寂しいのだとは感じる。
「どうぞ」ともう一度菓子袋を差し出し近づくと、前触れもなく扉が勢いよく開いた。
扉が壊れるのかと思うほどの音にびくりとして、身体が固まる。
「何をしているんだ!?」
恐ろしい形相で入って来たのはフィルベルド様だった。
菓子袋を目の前で差し出しているクレイグ殿下をちらりと見るとニコリとしている。
この様子に、窓辺からフィルベルド様が見えていたんじゃないかと思う。
「……フィルベルド様が来ることを知ってましたね?」
「思ったよりも早かったね……それにしても息も乱れてないよ。さすがフィルベルドだねぇ」
フィルベルド様をからかう様子に、楽しいものを見つけたように笑うクレイグ殿下に「やめてください」と懇願したくなる。そう言う隙も無いほどあっという間に私を引き寄せてクレイグ殿下から庇って来ると一言思う。
あぁ、あれがやって来た……と。
「ディアナ。大丈夫か!? なにもされてないか!?」
「大丈夫です。落ち着いてください。落ち着いてくださいね」
フィルベルド様の腕の中でそう言うが、落ち着くことはない。
「何故あんなに近くにいたんだ?」
「お菓子をお渡ししていただけですからね。問題ありません」
「菓子? クレイグ殿下に菓子を作って来ていたのか? 王妃様に頼まれて来たんじゃないのか? 俺に秘密で会う気だったのか?」
「フィルベルド様の分はルトガー様にお渡ししてますよ? ルトガー様に聞いてこちらに来たんじゃないのですか?」
「聞いたのは王妃様だ。城で会ってディアナに頼み事をしたと聞いて急いで来たんだ」
どうやら、王妃様が城でフィルベルド様に、私のことでお礼を言ったらしい。
「慈悲のある奥方で感謝します」と涙ながらにフィルベルド様に伝えたが、フィルベルド様はきっともうそれどころではなかっただろう。
「フィルベルド。ディアナの菓子は美味しかったよ」
「そうですか。思ったよりも元気そうで安心しました。ディアナは連れて帰りますよ」
「別にいいよ。話なんかないしね……でも、次はもっと甘い菓子にしてくれるかい?」
「かまいませんけど……」
「また来る気か!?」
「ダメですか? でも、王妃様の許可もありますからこの塔の出入りは自由になったんですよ」
「なら、俺も来るぞ!! 絶対に二人にはさせない!!」
「フィルベルドは騒がしいから来なくていいよ」
「クレイグ殿下に拒否権はありませんよ!」
ツンとそっぽを向いたクレイグ殿下にフィルベルド様は冷たくそう言い放った。
迫力がありすぎてちょっと怖い。
そのまま、クレイグ殿下に挨拶をして塔をあとにするとフィルベルド様は、無言のままで私と歩いていた。
「あの……人に言えないようなことはありませんから、フィルベルド様が心配することないですよ? クレイグ殿下は、ただ寂しいだけですよ」
「クレイグ殿下がどうかは知らないが……ディアナが浮気をするとは思ってない」
「本当ですか?」
「ただ……二人でいて欲しくない。ディアナを誰かに取られそうで不安になる」
それは、まだ本当の夫婦になってないからだろう。私がフィルベルド様を受け入れてないからだ。
握られている手に、フィルベルド様の力が入っているのがわかる。
「誰かに取られても奪い返しに行くが……ディアナだけは誰にも渡したくない」
「……では、本当の夫婦になりましょう」
そう言うと、お互いの足が止まっていた。