白い結婚なので離縁を決意したら、夫との溺愛生活に突入していました。いつから夫の最愛の人になったのかわかりません!
閑話 母親 前編(ディアナの母親視点)
「お母様。物がいっぱいです」
「そうね。結婚した時に持って来たからね。それよりもディアナの気に入りそうな花瓶はあるかしら?」
物置部屋には、結婚した時に隣国ゼノンリード王国から持って来た荷物がたくさんあった。
たくさんの本に机に椅子。花瓶など日用品もあった。
そんな隣国ゼノンリード王国から嫁いできた私の実家は魔法使いの家系だった。
でもその力は段々と薄れており、私自身も魔法使いでもなかった。
そして、隣国ゼノンリード王国に仕事に来ていた夫と出会い、夫の誠実さに惹かれて結婚したのだ。
そんな夫は今でも私を大事にしてくれている。
そして、私たちのたった一人の娘のディアナ。
5歳になったばかりのディアナと、物置部屋で夫から贈られた花を生けるのに小ぶりの花瓶を探していた。それは、なんの変哲もない日常だった。
「お母様。この箱はなんですか? お花を入れてもいいですか?」
「どの箱かしら? 何も入ってないなら…………っ!?」
「変な宝石……?」
「ディアナ!? それはダメ!!」
「え……?」
ディアナの持っていた箱と楕円の宝石。慌てて取り上げようとすると、ほんの一瞬で楕円の宝石が光を放った。
まぶしくて目も空けられないどころか、光に近づけなかった。
____ゴトンッ。
箱が床に落ちたと同時にディアナの泣き叫ぶ声が響いた。
眩んだ目を開けると、ディアナが腰を抜かしたように座り込み目を押さえている。
「うわぁーーん!! 痛い、痛いよーー!! お母さま! お目々が……痛いよ……!! あぁーーん!!」
ディアナの手にはすでに何も持ってなかった。
どうしてこの魔法の箱が開くのか……。
代々続いたこの魔法の箱は、実家であるサーベルグ男爵家では誰も開くことが出来ず、ひたすら隠されていた。
サーベルグ男爵家は、国に使える魔法使いを輩出しており、魔法の使えない人間は当主に出来なかった。だから、私も隣国であったこのヴェレス王国に嫁ぐ時も反対すらされなかった。
それでも、この魔法の箱だけは誰にも渡せずに直系である私に渡された。
代々伝わる大事な物であるのは間違いないが、誰にも開くことのできない魔法の箱をいつしか忘れられ、何が入っているのかもわからない魔法の箱に誰も興味を持つことはなかった。
私がお祖父様から教えられたことも、先祖に力のある魔法使いがいたということ。
そして、人々に利用されないようにこの魔法の箱のことは誰も知られないようにしていたということだけ。
「ディアナ……!」
「あぁーーん……!!」
目を押さえて泣きわめくディアナを抱きしめると、身体中が熱い。
落ちた魔法の箱が目に入ると、箱の内側に『真実の瞳』と古代文字が浮かんでいた。
私は、魔法使いではないが実家が魔法使いの家だったから魔法の勉強はしていた。少しなら古代文字も読めるし、『真実の瞳』のことも珍しい遺物だということは知っていた。
どうしてディアナが魔法の箱を開くことが出来たのかはわからないけど、身体の熱は『真実の瞳』がディアナの小さな身体には過ぎたものだということ。
魔力過多の子供がすぐに熱を出すのと同じだ。ましてやディアナは魔法使いではない。
身体の熱はディアナの体力を奪い、ベッドに寝かせているディアナは、うわ言のようにぐしゅぐしゅと泣きながら「痛いよ……」と呟く。
スウェル子爵家の老齢の主治医に診せて、熱冷ましを飲ませても長くは効果がない。
ほんのひと時眠るだけ。それでも、泣き叫ぶ我が子がその間だけ眠ることを見ると意味のないこととは思わなかった。
夫は、仕事で王都に出かけている。すぐには戻れない。
その間にディアナがいなくなってしまったら……そう思うと、身体中がざわつくように血の気が引いていく。
「……お母さま……お目々が痛いの……どこにも行かないでください……」
「大丈夫よ、ディアナ。必ずお母様が治してあげます」
弱々しく握る小さな手が熱い。でも、この手が冷たくなることは許せなかった。
「そうね。結婚した時に持って来たからね。それよりもディアナの気に入りそうな花瓶はあるかしら?」
物置部屋には、結婚した時に隣国ゼノンリード王国から持って来た荷物がたくさんあった。
たくさんの本に机に椅子。花瓶など日用品もあった。
そんな隣国ゼノンリード王国から嫁いできた私の実家は魔法使いの家系だった。
でもその力は段々と薄れており、私自身も魔法使いでもなかった。
そして、隣国ゼノンリード王国に仕事に来ていた夫と出会い、夫の誠実さに惹かれて結婚したのだ。
そんな夫は今でも私を大事にしてくれている。
そして、私たちのたった一人の娘のディアナ。
5歳になったばかりのディアナと、物置部屋で夫から贈られた花を生けるのに小ぶりの花瓶を探していた。それは、なんの変哲もない日常だった。
「お母様。この箱はなんですか? お花を入れてもいいですか?」
「どの箱かしら? 何も入ってないなら…………っ!?」
「変な宝石……?」
「ディアナ!? それはダメ!!」
「え……?」
ディアナの持っていた箱と楕円の宝石。慌てて取り上げようとすると、ほんの一瞬で楕円の宝石が光を放った。
まぶしくて目も空けられないどころか、光に近づけなかった。
____ゴトンッ。
箱が床に落ちたと同時にディアナの泣き叫ぶ声が響いた。
眩んだ目を開けると、ディアナが腰を抜かしたように座り込み目を押さえている。
「うわぁーーん!! 痛い、痛いよーー!! お母さま! お目々が……痛いよ……!! あぁーーん!!」
ディアナの手にはすでに何も持ってなかった。
どうしてこの魔法の箱が開くのか……。
代々続いたこの魔法の箱は、実家であるサーベルグ男爵家では誰も開くことが出来ず、ひたすら隠されていた。
サーベルグ男爵家は、国に使える魔法使いを輩出しており、魔法の使えない人間は当主に出来なかった。だから、私も隣国であったこのヴェレス王国に嫁ぐ時も反対すらされなかった。
それでも、この魔法の箱だけは誰にも渡せずに直系である私に渡された。
代々伝わる大事な物であるのは間違いないが、誰にも開くことのできない魔法の箱をいつしか忘れられ、何が入っているのかもわからない魔法の箱に誰も興味を持つことはなかった。
私がお祖父様から教えられたことも、先祖に力のある魔法使いがいたということ。
そして、人々に利用されないようにこの魔法の箱のことは誰も知られないようにしていたということだけ。
「ディアナ……!」
「あぁーーん……!!」
目を押さえて泣きわめくディアナを抱きしめると、身体中が熱い。
落ちた魔法の箱が目に入ると、箱の内側に『真実の瞳』と古代文字が浮かんでいた。
私は、魔法使いではないが実家が魔法使いの家だったから魔法の勉強はしていた。少しなら古代文字も読めるし、『真実の瞳』のことも珍しい遺物だということは知っていた。
どうしてディアナが魔法の箱を開くことが出来たのかはわからないけど、身体の熱は『真実の瞳』がディアナの小さな身体には過ぎたものだということ。
魔力過多の子供がすぐに熱を出すのと同じだ。ましてやディアナは魔法使いではない。
身体の熱はディアナの体力を奪い、ベッドに寝かせているディアナは、うわ言のようにぐしゅぐしゅと泣きながら「痛いよ……」と呟く。
スウェル子爵家の老齢の主治医に診せて、熱冷ましを飲ませても長くは効果がない。
ほんのひと時眠るだけ。それでも、泣き叫ぶ我が子がその間だけ眠ることを見ると意味のないこととは思わなかった。
夫は、仕事で王都に出かけている。すぐには戻れない。
その間にディアナがいなくなってしまったら……そう思うと、身体中がざわつくように血の気が引いていく。
「……お母さま……お目々が痛いの……どこにも行かないでください……」
「大丈夫よ、ディアナ。必ずお母様が治してあげます」
弱々しく握る小さな手が熱い。でも、この手が冷たくなることは許せなかった。