秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
「亡き会長のお孫さんを悪く言いたくはないが、昴さんの功績はすべて部下の成果を横取りしただけで実態がない。小さな子会社ならともかく、彼にこの大河内グループ全体を率いていく能力はない」
そのうわさは二年ほど前からポツポツと耳にするようになっていた。谷口は執念深くそれを調べあげたようで、分厚い報告書を投げてよこした。
「ですが、後継者は昴というのは祖父の意思でもありますし」
昴の横暴が事実なら見過ごせないが、トップの遺言をないがしろにする前例を作るのも同じくらい問題がある。志弦は頭を抱えた。
谷口が深刻そうに声をひそめる。
「その遺言だって……私は正直、疑わしいと思っている」
「どういうことです?」
しばらく中枢から追いやられていた身なので、そんな話は聞いたことがなかった。彼の説明によると、遺言公開前後の顧問弁護士の行動に不審な点があるらしい。
「わかりました。その点はきちんと調べます」
志弦を見る彼の目が、よりいっそう鋭くなる。
「……調査の結果次第では、あなたがトップの椅子に座る。その覚悟をしていただけますか?」
現在の立場は彼が社長で、志弦は部下だ。その谷口が自分に敬語を使ったことの意味を、志弦は重く受け止める。彼の目をまっすぐに見て、うなずいた。
「承知しています」
そのうわさは二年ほど前からポツポツと耳にするようになっていた。谷口は執念深くそれを調べあげたようで、分厚い報告書を投げてよこした。
「ですが、後継者は昴というのは祖父の意思でもありますし」
昴の横暴が事実なら見過ごせないが、トップの遺言をないがしろにする前例を作るのも同じくらい問題がある。志弦は頭を抱えた。
谷口が深刻そうに声をひそめる。
「その遺言だって……私は正直、疑わしいと思っている」
「どういうことです?」
しばらく中枢から追いやられていた身なので、そんな話は聞いたことがなかった。彼の説明によると、遺言公開前後の顧問弁護士の行動に不審な点があるらしい。
「わかりました。その点はきちんと調べます」
志弦を見る彼の目が、よりいっそう鋭くなる。
「……調査の結果次第では、あなたがトップの椅子に座る。その覚悟をしていただけますか?」
現在の立場は彼が社長で、志弦は部下だ。その谷口が自分に敬語を使ったことの意味を、志弦は重く受け止める。彼の目をまっすぐに見て、うなずいた。
「承知しています」