秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
大河内家に生まれた責務もあるが、『後継者である昴と清香の結婚を望む』という祖父の遺言に間違いがあったなら……そのときは、堂々と清香を迎えに行けるのでは? そんな思いもあった。
(きっぱり振られているに等しいのに、我ながら未練がましい)
三か月後。オフィスの窓から咲き誇る桜が見える。桜はこちらでも大人気で、淡いピンクが風にのってハラハラと舞うところを眺めていると、ここがロンドンであることを忘れてしまいそうになる。
「――そういうことだったのか」
谷口との電話を終えた志弦は、暴かれた真実の重大さにそれきり言葉を失う。
そのとき、トントンというノックの音とともに扉が開いた。現地で雇った従業員のひとりだ。純英国人であるリチャードとのコミュニケーションは、当然英語だ。
「日本から志弦当てに手紙だよ。大河内ホールディングスからとなっている」
「あぁ、ありがとう」
礼を言って受け取る。たしかに、つい先日まで在籍していた会社の、見慣れた封筒だ。
「でも、なんで手紙なんだ?」
仕事のことならメールや電話のほうが早い。不思議に思いながら、封を開ける。大河内ホールディング総務部からの送付状には、志弦個人宛てに届いていた手紙を転送する。ほかの資料に紛れてしまい気づくのが遅くなったという謝罪の言葉も記されていた。
ふた月以上前の消印になっている淡いブルーの封筒。
(きっぱり振られているに等しいのに、我ながら未練がましい)
三か月後。オフィスの窓から咲き誇る桜が見える。桜はこちらでも大人気で、淡いピンクが風にのってハラハラと舞うところを眺めていると、ここがロンドンであることを忘れてしまいそうになる。
「――そういうことだったのか」
谷口との電話を終えた志弦は、暴かれた真実の重大さにそれきり言葉を失う。
そのとき、トントンというノックの音とともに扉が開いた。現地で雇った従業員のひとりだ。純英国人であるリチャードとのコミュニケーションは、当然英語だ。
「日本から志弦当てに手紙だよ。大河内ホールディングスからとなっている」
「あぁ、ありがとう」
礼を言って受け取る。たしかに、つい先日まで在籍していた会社の、見慣れた封筒だ。
「でも、なんで手紙なんだ?」
仕事のことならメールや電話のほうが早い。不思議に思いながら、封を開ける。大河内ホールディング総務部からの送付状には、志弦個人宛てに届いていた手紙を転送する。ほかの資料に紛れてしまい気づくのが遅くなったという謝罪の言葉も記されていた。
ふた月以上前の消印になっている淡いブルーの封筒。