秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
「清香も、本当にありがとう。俺がいない間も碧乃を守ってくれて。もう二度と君に心細い思いをさせたりはしない。清香と碧乃を世界一幸せにするよ」
「私も。志弦さんと碧乃を幸せにできるよう、がんばります!」

 そして、出産から三週間後。ふたりは赤坂の大河内本家に戻ってきた。
「久しぶりに見ると、やっぱりすごいお屋敷ですね」
 門から母屋までがものすごく遠い。碧美島でのアパート暮らしにすっかり慣れた身には、豪華すぎて落ち着かない気分になる。
(今日からこの屋敷の奥さま。本当に私に務まるのかなぁ)

 清香の不安を察したのか、志弦が優しく肩を抱く。
「君らしく過ごしてくれればいい。俺が望むのはそれだけだ」
「はい」
 ふたりが正面玄関を開けると、ずらりと並んだ従業員たちがいっせいに頭をさげた。
「おかえりなさいませ」
「あぁ、長く留守にして申し訳なかった」
 答える志弦の顔にはすっかり当主の風格が宿っていて、清香はときめいてしまう。
(こんなにかっこいい人が私の旦那さま……夢見てるみたいだなぁ)

「清香さん! おかえりなさい」
 駆けてきて、ぎゅっと清香の首に腕を回したのは千佳だ。
「千佳さん! お久しぶりですね」
「も~。行方不明らしいって聞いて心配したのよ。やっと帰ってきたと思ったら、ママになってるしさ。びっくりよ」
 千佳は唇をとがらせる。
「すみません。心配かけちゃって」
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