秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
「パーティーの準備はできてるからね! 駒子さんが張りきっちゃって、今日は五時起きしたのよ~」
 屋敷のみんなが用意してくれたごちそうは最高においしくて、碧乃も終始ご機嫌だった。自分が大河内家の一員として歓迎されていることが、本当にうれしかった。感極まって思わず涙をこぼしたら、駒子と千佳に笑われてしまった。

 その夜。
「慣れない環境で少し疲れたかな。碧乃、ぐっすりだ」
「本当ですね」
 碧乃も暮らしやすいようにと、駒子がいろいろと準備してくれていた新しい夫婦の寝室で、清香と志弦はようやくひと息ついた。かわいらしい木製のベビーベッドのなかで彼女はスヤスヤと眠っている。

 清香も大きなベッドに腰をおろし、ふぅと息を吐く。
「素敵なお部屋ですね」
 以前借りていたのは和室だったけれど、ここは洋間だ。重厚感のある家具が大正浪漫な雰囲気を醸し出している。ベッドサイドを橙色に照らすスタンド型のシェードランプは傘の部分が花模様のステンドグラスで、すごくかわいい。
「来客用にいくつか洋室も用意があるんだ。産後の身体には洋室のほうが過ごしやすいと聞いたから、駒子さんに頼んでここを用意してもらった」
「そうだったんですね」

 志弦らしい細やかな気遣いがうれしかった。
「インテリアは気に入らなければ、好きに変更していいよ。今度一緒にインテリアショップ巡りをしようか」
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