秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
「本当? 志弦さんにも言われたから、この子は私に似てるのかな~」
 志弦に似たほうが確実に美人になるだろうから、なんとなく碧乃に申し訳ない気持ちになる。

「その志弦さんは海外出張か~。新婚早々寂しいね」
「うん。でも、一日三回はビデオ通話してるし。さっきも茉莉が来てくれることを報告したところでね」
 彼の話をすると無意識に顔がにやけてしまって、すかさず茉莉にちゃかされる。
「や~、愛されてるのね~」
「えっ、あ……うん」
 頬を染めながらも、素直にうなずく。だって、彼は清香が不安に思う隙もないほどに愛を伝えてくれるから。否定するのは、そんな彼に失礼な気がした。

 茉莉は優しく目を細める。今度はちゃかすのではなく、真面目な声で言う。
「よかった! 清香は自己評価が低すぎるところがあったから、志弦さんみたいにたっぷりの愛で包んでくれる人とは相性抜群だと思うよ。いつまでもお幸せにね」
「ありがとう、茉莉。そうだ、茉莉の恋はどうなったのよ?」
「それよ、それ! 聞いてくれる?」

 茉莉が手土産に持ってきてくれたキャラメルチーズケーキを味わいながら、ふたりは恋の話に花を咲かせる。
「清香がいない間に、私、ものすごーくがんばったのよ」
「うんうん」
「でね、来週ついに初デートなの!」
 興奮気味に語る彼女の表情はいつも以上にキラキラと輝いていて、清香の相づちにも力が入る。
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